「加害者家族」――罪を犯してしまった当人の親やパートナー、子どもなど血縁関係にある人たちは、欧米では「隠れた被害者」と呼ばれる。加害者家族たちは「家族だから」という理由で、社会的あるいは心理的に追い詰められることも多く、中には自死を選んでしまう人もいる。 中でも1000人超にのぼる性犯罪の加害者家族にソーシャルワーカーとして向き合ってきた斉藤章佳氏は、加害者家族の困難を理解することが、支援につながるとしている。では、実際に加害者家族はどのような暮らしをしているのか。斉藤氏の新著『 夫が痴漢で逮捕されました 』(朝日新聞出版)より一部抜粋し、お届けする。(全3回の1回目/ 2回目を読む / 3回目を読む ) ◆◆◆ 病院の待合室で携帯電話の着信を確認したB子は、見知らぬ番号に一瞬躊躇した。 当時、B子は妊娠8か月。その日は定期健診の予定が入っていた。不安を感じながら電話に出ると、警察署からだった。「お宅のご主人が盗撮行為で現行犯逮捕されました」。その瞬間から、看護師としても充実した日々を送っていたB子の日常は一変した。 B子の夫は医師だった。ふたりは同じ大学病院で出会い、結婚。それぞれ異なる病院に勤務しながら、第1子を授かり、順調な生活を送っていた。このまま普通の幸せな家庭が築けると思っていた矢先の逮捕だった。