不正輸出の疑いをかけられた「大川原化工機」(横浜市)への捜査を違法と認定した東京高裁の判決が確定したことを受け、警視庁の鎌田徹郎副総監と東京地検の森博英公安部長が20日、同社の本社を訪れ、大川原正明社長(76)らに謝罪した。事件捜査をめぐり、警視庁や東京地検の幹部が当事者に謝罪をするのは異例だ。 警視庁の鎌田副総監は「捜査によりご心労ご負担をおかけしたことをおわび申し上げます。このようなことを二度と起こさないように取り組みます」と述べた。 東京地検の森公安部長も「検察官の起訴と勾留請求で多大なるご負担をおかけした。二度とこのようなことが起こらないよう、適正な検察権行使に努めてまいります」と謝罪した。 これに対し、大川原社長は「この謝罪がもっと早く、早い段階でしていただきたかった。二度とこのようなことを起こさない組織にしてほしい」と応じた。 警視庁公安部は2020年3月、同社が製造する「噴霧乾燥機」について、輸出規制があるのに無許可で輸出したとする外国貿易法違反の疑いで3人を逮捕し、東京地検が起訴した。 しかし地検は21年7月、機器が「規制要件に該当しない可能性がある」として初公判直前に起訴を取り消した。 大川原化工機側は同年9月、この捜査の違法性を問う国家賠償請求訴訟を提起。25年5月28日の東京高裁判決は、公安部と地検が追加実験などをしていれば不正輸出に当たらないと判断できたなどとして、逮捕や起訴に「合理的根拠がなかった」と指摘。一審に続き、捜査の違法性を認定し、6月12日に判決が確定した。(藤牧幸一、比嘉展玖)