6月20日昼過ぎ、横浜市都筑区の機械メーカー「大川原化工機」の前に、警視庁の鎌田徹郎副総監と検察庁の森博英公安部長が相次いで現れた。2人とも同じような紺色の背広姿に、鎌田副総監は黒のネクタイ、森公安部長はストライプ柄のネクタイ姿。居並ぶ報道カメラにわき目もふらず、建物に消えていった。 「大川原化工機」の大川原正明社長(76)らは2020年3月、「生物兵器に転用できる噴霧乾燥機を中国と韓国に不正に輸出した」として外国為替および外国貿易法違反容疑で逮捕され、長期勾留を受けていた。同社の元顧問・相嶋静夫氏は拘留中に癌が悪化し、保釈請求を何度も却下されたことで入院が遅れ、2021年2月に72歳で亡くなった。 しかし同年9月、同社は捜査や逮捕が捏造による冤罪であるとして警視庁(東京都)と東京地検(国)を相手に国賠請求訴訟を起こし、一審、二審とも勝訴。東京都と国が上告を断念したことで判決が確定している。 この裁判では、東京地裁での一審に捜査に関わった現役の刑事2人が証人尋問に答え、捜査を「まあ、捏造です」「捜査幹部がマイナス証拠を取りあげない」と告白。東京高裁での二審でも別の刑事が「日本の安全を考えるうえでも全くない。決定権を持つ人の欲だ」と証言するなど異例の展開が繰り広げられ、事実上の捏造を認める判決が下されている。 この事件を起訴した東京地検も2021年7月に起訴を取り消すなど、警察・検察への信頼が失墜していた。