機械メーカー「大川原化工機」の精密機械不正輸出をめぐる冤罪(えんざい)事件で、警視庁の鎌田徹郎副総監と、東京地検の森博英公安部長が、不当な捜査を謝罪した。警視庁公安部と検察の捜査が違法だったと認めた東京高裁の2審判決を受け、国と都は今月、上告を断念。警察庁も再発防止に努めるとしていた。 ことの発端は、2020年に大川原化工機の大川原正明社長や、顧問の相嶋静夫さんら3人が、警視庁公安部に逮捕、起訴されたことだった。液体を短時間で乾燥させ、粉末や顆粒にするスプレードライヤーを、中国へ不正輸出した疑いだった。 この機器は食品や医薬品の製造に広く利用されているが、一部の製品が軍事転用できるとして、輸出が規制されている。その規制条件の一つが「製品の内部で滅菌・殺菌できる」というもので、警視庁公安部は製品がこの機能を有しているとして、不正輸出としたのだ。しかし大川原化工機側は、実験を繰り返し、製品内部で滅菌・殺菌が不可能であることを証明。これにより初公判の4日前に、検察は起訴を取り消した。 大川原化工機側は、違法捜査で逮捕・起訴されたとして、国と東京都を相手に約5億7000万円の損害賠償を求め提訴した。その裁判の中で、捜査に当たった警視庁公安部の捜査員自ら、事件が捏造(ねつぞう)だったと証言した。 今回の冤罪事件では、長期間の勾留を強いる“人質司法”も浮き彫りになった。逮捕・起訴された3人のうち、相嶋さんは勾留中にがんだと判明し、十分な治療が受けられないまま、釈放後に亡くなった。この冤罪はなぜ起きたのか。『ABEMA Prime』では、大川原社長と担当弁護士とともに考えた。