イギリスのイヴェット・クーパー内相は23日、反イスラエル活動を展開する団体「パレスチナ・アクション」を、テロ対策法に基づきテロ組織に指定し、活動を禁止する方針を明らかにした。来週にも、活動禁止を命令する案を議会に提出する予定という。 パレスチナ・アクションの活動家らは20日、活動の一環として、オックスフォードシャー州にある英空軍ブライズ・ノートン基地に侵入し、軍用機2機に赤い塗料を吹きかけた。クーパー内相はこの行為を「恥ずべきものだ」と非難した。 命令案が議会で可決されれば、同団体への加入や支援は刑事罰の対象となり、最長14年の懲役刑が科される可能性がある。 パレスチナ・アクションは、政府の対応を「常軌を逸している」と批判した。 同団体は23日にもロンドン中心部で抗議デモを実施し、数百人が参加した。警察ともみ合いになり、13人が逮捕された。 ■空軍基地に侵入、軍用機に塗料吹きかけ 20日に発生したブライズ・ノートン基地への侵入事件をめぐっては、イギリスの対テロ警察の主導で捜査が進められている。 ルーク・ポラード国防担当政務次官はこの侵入行為について、「極めて愚かだというだけでなく、国家安全保障への直接的な攻撃だ」と非難した。 23日に英議会で軍事基地の安全対策に関する声明を発表したポラード次官は、「空軍のヴォイジャー機2機が塗料による損傷を受けたが、施設やその他の資産に追加の被害はなく、ブライズ・ノートン基地からの作戦計画にも影響は出ていない」と説明した。 さらに、同じような事件が「二度と起きてはならない」と強調し、「20日以降、防衛関連施設全体に強化された安全対策を導入した」と述べた。 一方、パレスチナ・アクションは声明で、「真の犯罪は、これらの戦闘機に赤い塗料を吹きかけたことではなく、イギリス政府がイスラエルによるジェノサイド(集団虐殺)に加担することで、これらの戦闘機が戦争犯罪に利用されていることだ」と主張した。 「私たちは教師、看護師、学生、人の親であり、イスラエルのジェノサイドに武器を供給している民間企業の活動を妨害するため、塗料を使ったり工場に侵入したりしている。私たちをイスラム国(IS)や(英極右団体)ナショナル・アクションや、(アフリカのイスラム過激派組織)ボコ・ハラムのようなテロ組織と同列に扱うなど、明らかにばかげている」と、パレスチナ・アクションは主張した。 その上で、「すべての法的手段を講じるよう、弁護団に指示している」と述べた。 イスラエル政府は、パレスチナ・ガザ地区で続く戦争に関して、国際司法裁判所(ICJ)での訴訟をはじめ、ジェノサイドを実施しているという指摘を強く否定している。 ■「テロ対策法の基準を満たした」と内相 クーパー内相は23日の発表で、パレスチナ・アクションが「長年にわたり器物損壊を繰り返してきた」と指摘し、2024年以降は「その頻度と深刻さが増している」と述べた。 「イギリスの防衛の取り組みは国家安全保障にとって極めて重要で、政府はその安全を脅かす行為を容認しない」 また、同団体が「金融機関、慈善団体、大学、政府庁舎」などを標的にしていると指摘し、「こうした活動が2000年テロ対策法に定められた基準を満たしている」と説明した。 さらに、パレスチナ・アクションが2020年の設立以来行ってきた重大な破壊行為により、「数百万ポンド」規模の損害が発生していると指摘した。 クーパー内相はまた、昨年発生した2件の侵入事件にも言及。1件目はケント州にあるインストロ・プレシジョン社の工場で、2件目は英南西部ブリストルにあるイスラエル企業エルビット・システムズのイギリス支社本部で起きた。 パレスチナ・アクションの公式ウェブサイトには、同団体が「直接行動の運動」で、イスラエルの軍事作戦を支援する者を標的に「破壊的な戦術」を用いていると書かれている。 2022年には、同団体の活動家がスコットランド・グラスゴーにある仏防衛大手タレスの工場に侵入し、発煙筒や発火装置を使って113万783ポンド(約2億円)相当の損害を与えている。 一方でクーパー内相は、今回の措置はあくまでパレスチナ・アクションに限定されたものであり、中東に関する合法的な抗議活動や市民運動には影響しないと明言した。 「平和的に抗議する権利は極めて重要であり、パレスチナ支持団体やイスラエル政府の行動に反対する人々、イギリスの外交政策の変更を求める人々が引き続き活動できることが必要だ」と、内相は強調した。 最大野党・保守党の影の国防相、ジェイムズ・カートリッジ氏は、ブライズ・ノートン基地での事件は「器物損壊ではなく、破壊工作だ」と述べた。 一方、与党・労働党のナディア・ウィットム下院議員は、「この措置は危険な前例となり、将来的に政府が批判者を抑圧するためにさらに利用する可能性がある」と警鐘を鳴らした。 ■トラファルガー広場の集会で警察ともみ合い 内相の発表を前に、警察がパレスチナ・アクションの議会前での抗議活動を禁止したことを受け、数百人のデモ参加者がロンドン中心部のトラファルガー広場に集まった。 抗議活動の主催者は、ロンドン警視庁がウェストミンスターの広範囲に排除区域を設定したことを受け、直前になって会場を変更した。 ロンドン警視庁のマーク・ロウリー警視総監は、警察には抗議活動そのものを法的に禁止する権限はないとしながらも、「厳格な」条件を課すと述べた。 トラファルガー広場に隣接するチャリング・クロス周辺では、抗議者が集まったことで一時的に通行が遮断された。 一部の参加者はパレスチナの国旗を掲げ、プラカードを手にしていた。また、他の参加者は「私たちは沈黙しない」と声を上げた。 抗議活動は現地時間午後3時に終了するよう求められており、警察はその時間に合わせて群衆の解散に乗り出した。 ロンドン警視庁によると、この抗議活動で13人を拘束した。救急隊員への暴行で6人、人種差別的な言動による公共秩序違反で1人、解散命令の拒否で4人、警察官の職務執行を妨害したとして2人を、それぞれ逮捕したという。 (英語記事 Palestine Action group to be banned, home secretary confirms)