相葉雅紀が『大追跡』のキーマンに テレ朝伝統“刑事もの枠”をアップデートできるか

大森南朋、相葉雅紀、松下奈緒がトリプル主演を務めるテレビ朝日系ドラマ『大追跡~警視庁SSBC強行犯係~』が、7月9日からスタートする。 本作は“SSBC=捜査支援分析センター(Sousa Sien Bunseki Center)”内に新設された、捜査一課を専門に支援する“強行犯係”が舞台となっている。大森が演じる伊垣修二は、3年前に捜査一課からSSBCに異動となった人物。元刑事ということもあり、“裏方”的なポジションのSSBCに不満を感じている。相葉演じる名波凛太郎は元外資系証券会社のファンドマネージャー。「国家公務員総合職中途採用試験」に合格し入庁した“キャリア組”で、SSBCへ配属され伊垣とバディに。そして松下は警視庁捜査一課・主任の青柳遥を演じる。伊垣とは元夫婦という設定で、SSBCには常に“上から目線”。この3人を中心に“新しくて王道の刑事ドラマ”が展開される。 テレビ朝日の“水曜9時”は代々“刑事もの”として伝統のある枠である。別名“相棒枠”“東映枠”とも言われており、1988年4月スタートの藤田まこと主演の『はぐれ刑事純情派』以降、40年近く一貫して東映制作の刑事ドラマが放送されている。 今や長寿番組となった水谷豊主演の『相棒』も、この枠で2002年10月にスタート(当時は『相棒・警視庁ふたりだけの特命係』)。当初1クールだったが、翌年10月のseason2から2クールで放送されるようになり、以来22年にわたって“10月期から2クールは『相棒』”というのが定着している。 そして本作『大追跡~警視庁SSBC強行犯係~』は、2015年に放送を開始し東山紀之が主演を務めた『刑事7人』以来、10年ぶりの“水曜9時”枠の新シリーズとして誕生した。 舞台となるSSBCは、2009年に警視庁に新設された防犯カメラ映像の収集や分析、通信機器の解析を担当する専門チーム。“デジタル捜査の最前線”であり、数年前の広域強盗事件で指示役と呼ばれる人物が逮捕された際、秘匿性の高い通信アプリを解析し、事件の解明と指示役の立件に大きく貢献したことにより、その名が広く知れ渡ることとなった。 そのSSBCにスポットを当てたドラマは初めてであり、警察監修を担当している古谷謙一も自身のXで「これまでになかった新たな刑事ドラマ」という旨を語っている(※1)。各所に設置されている防犯カメラ等の画像をつなぎ合わせて犯人を追跡する“リレー方式”と呼ばれる捜査手法は、 “センス”と“根気”のいる非常に地道なプロセス。だがそれこそがドラマのハイライトであり、テンポ感のあるデジタルデータの見せ方など力の入ったビジュアルの演出によって見る側を一気に引き込む。 第1話では“デジタル・エビデンス”という耳馴染みのない言葉と共に、防犯カメラの映像がどのように分析・解析され、“動かぬ証拠”となり得るのかが丁寧に描かれる。犯人特定に至るプロセスは非常にスリリングで、ある意味、“お仕事ドラマ”としても楽しめそうだ。 また、メンバーはプロファイリングや顔認証など各領域のプロフェッショナルであり、個々に動き協力し合うそのチーム感は、現代を象徴するような軽やかさがある。一方、捜査一課の動き方は旧態依然としたトップダウン型であり、そのコントラストはなかなかコミカル。こういった設定からも、伝統の“刑事もの”枠においてアップデートされた世界観を提示していきたいとの意気込みがうかがえる。 そんな新シリーズにおけるキーマンは、SSBCに出向してきた“キャリア組”名波(相葉雅紀)であろう。相当なキレ者ではあるが堅物感はゼロ。コミュニケーション能力が高く穏やかな印象を与える名波は、相葉のパブリックイメージそのままだ。だが単にふんわりしているだけではなく、“外から来た”ことを逆手に取って、無邪気さを前面に漂わせつつも、意味のない慣習や通例に次々とメスを入れていく。その様子はトリックスター的でなかなか痛快である。また、第1話でSSBCに来た理由を「悪いやつを捕まえるためです」と答えた名波。バックグラウンドに似つかわしくないその知性抑えめな表現は、まだ見せていない顔があることを連想させ、次回以降へと興味をひっぱる装置としてもなかなかに強力だ。

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