慶尚北道安東市(キョンサンブクド・アンドンシ)のある女子高校で、元教員と保護者が共謀して試験問題を盗み出そうとした事件により、安東の地域社会が騒然とした雰囲気に包まれている。犯行に及んだ元教員と保護者は拘束され、生徒には退学処分まで予告されたが、地域の保護者たちの怒りは収まっていない。 事件は4日午前1時20分ごろ、慶尚北道安東市のある女子高校で発生した。この学校で昨年2月まで勤務していた元臨時教員のAさん(31)が、正門の出入口端末に指紋を認証して入ったが、このときAさんの後ろには同校に通う高校3年生の母親であるBさん(48)がいた。 ◇指紋認証で校内へ…非常ベルが鳴って発覚 深夜、彼らが向かったのは、期末試験の問題用紙が保管されていた3階の教務室だった。Aさんが暗証番号を入力して教務室のドアを開け、教務室内で試験問題を盗み出そうとした瞬間、防犯システムが作動した。驚いた2人は慌てて逃げたが、翌日警察に逮捕された。 Aさんが指紋を使って学校に入ることができたのは、校内の防犯システムに指紋情報がそのまま残っていたためだった。Aさんは現在、京畿道のある高校で臨時教員として勤務しているという。学校の事情に詳しいAさんは、教務室まで難なく入り、予備として印刷してあった試験問題を盗み出そうとしたと警察はみている。 暗証番号まで正常に入力して教務室に入ったにもかかわらず、防犯システムが作動したのは、システムの誤作動によるものとみられる。システムが正常に作動しておらず非常ベルが鳴らなかったとしたら、AさんとBさんは期末試験問題を持ち出して誰にも気づかれずに学校を抜け出していた可能性もあった。慶尚北道教育庁は、2人が3年生の教務室に入り、2~3分ほどで出てくる様子が廊下の防犯カメラに映っていたと説明した。 また、学校側によると、Aさんは昨年2月に辞めてから、少なくとも7回はこの学校に出入りしていたことが確認されている。多くが試験期間の夜だったことから、Aさんの犯行は今回が初めてではない可能性が高い。 ◇数回にわたって出入り…常習犯の可能性 警察は、AさんがBさんに試験問題を提供し、その見返りとして高額の金銭を受け取っていたと疑っている。BさんはAさんに対し、中間試験と期末試験のたびに200万ウォン(約24万円)ずつ、2年にわたり計約2000万ウォンを送金していたことが分かっている。 AさんとBさんは2020年、教員と保護者として初めて出会った。2023年にBさんの娘が高校に進学した際には、Aさんが1年生の担任を務めていた。AさんがBさんの娘に個人指導をしていた点も指摘されていて、現行法上これは違法にあたるため、警察はこの点についても調査を進めている。 学校側は14日、学業成績管理委員会を開き、Bさんの娘について退学処分を決定した。これまでの試験の成績もすべて0点として処理することにした。Bさんの娘は、主に全校1位を取るなど、最上位の成績を維持していたという。同日、大邱地裁安東支院はAさんに対して拘束令状を発付し、15日にはBさんも拘束した。警察は、Bさんの娘も業務妨害の疑いで立件し、調査する予定だ。 ◇保護者の抗議続く…「徹底的な調査を」 事件の全貌が明らかになると、安東地域の受験生の保護者の間には落ち着かない雰囲気が漂っている。中学生の子どもを持つキム・スジョンさん(39)は、「ドラマでしか起こらないようなことが私たちの住む町で起きたとは衝撃的だ」とし「Bさんが娘を医学部に進学させるためにこんなことをしたといううわさが保護者の間に広がっている」と語った。該当の学校には保護者からの抗議が続いている。 警察は、2人に対して特殊建造物侵入および業務妨害などの容疑を適用して捜査している。現在、試験問題が流出した正確な回数や時期、金銭の授受などについて、全面的に調査を進めている。また、2人の侵入を黙認した容疑で、学校施設の管理を担当していた30代のCさんも拘束して捜査している。Cさんは2人の侵入を黙認し、その後、学校の防犯カメラの保存期間を短縮したり映像を削除したりしたことが把握されている。 慶尚北道教育庁は現在、該当の学校が成績管理全般に問題がなかったかを調査中だ。警察の捜査が終わり次第、教育庁として正式な監査を実施し、私立学校財団に対し、関連する教職員への懲戒を勧告する計画だ。