39年前に福井市で起きた女子中学生殺人事件で、懲役7年の刑が確定し服役した前川彰司さん(60)の裁判のやり直し=再審の判決が、18日に言い渡されます。服役後、再審を求め続けた前川さんの、2度目の再審です。無罪の公算が大きいとされるなか、この事件や裁判がどのような経緯をたどったのか、振り返ります。 福井市に住む前川彰司さん(60)。前川さんは、39年前に起きたある事件を境に人生が一変しました。 1986年3月19日、福井市に住む当時中学3年の女子生徒が、卒業式を終えたその日の夜、自宅で一人でいたところを何者かに殺害されました。 警察は被害者に近しい非行グループを調べていきますが、黙秘や虚偽の証言も相次ぎ、捜査は難航しました。そうした状況の中、別の事件で拘留中の暴力団組員Aが取調中に「後輩の前川が犯人だ」と発言。有力な情報もないまま、警察はこの暴力団組員Aの供述を中心に捜査を進めます。 そして事件から約1年後の1987年3月29日、当時21歳だった前川さんが殺人の疑いで逮捕され、7月に起訴されました。 1990年9月、そんな前川さんに福井地方裁判所が下した判決は「無罪」。福井地裁は「関係者の供述は変遷があり、その核心部分に確実な裏付けもなく信用できず、物的証拠もなく犯罪の証明がない」としたのです。 しかし、検察側はこの判決を不服として控訴。 すると1995年2月、名古屋高裁金沢支部は、供述の変遷はあるものの「血の付いた前川さんを見た」などとする主な関係者の供述が大筋で一致しているとして、前川さんに懲役7年の逆転有罪判決を言い渡しました。 前川さんの弁護団は最高裁に上告しましたが、棄却されて刑が確定。約7年間服役することになったのです。2003年に刑期を終えた前川さんは翌年、名古屋高裁金沢支部に再審を請求します。(第1次再審請求) 2011年11月、名古屋高裁金沢支部は「関係者の供述の信用性は脆弱」として再審開始を決定しましたが、2013年3月、検察側が異議を申し立て再審開始が取り消されました。 2022年10月、前川さんの弁護団は新たな証拠を集め、2回目となる再審請求を行います。(第2次再審請求) すると検察側は、取調の供述調書や捜査報告書など新たに287点を開示。中には、事件発生時に前川さんと行動していたとされる関係者が当初、事件への関与を否定していたり、関係者が事件当日に見たと証言したテレビ番組のシーンが実際には放送されていなかったり、といった内容が含まれていました。 そして2024年10月23日、名古屋高裁金沢支部は「新しい証拠は『無罪を言い渡すべき明らかな証拠』と言える」とまで言及し、2度目となる再審開始の決定を下しました。 検察は、この再審開始決定に対する異議申し立てを断念しました。 そして迎えた、2025年3月6日の再審初公判では、検察と弁護団の弁論の他に、前川さんの意見陳述も行われました。 公判後の会見で前川さんは― 「意見陳述で言いたいことは言えたと思う。やはり憤りや腹立たしさは当然ある。はじめから検察の判断が間違っていた」 再審公判は、この日で結審しました。前川さんが殺人の疑いで逮捕されて38年。再審判決は、7月18日に言い渡されます。