保釈中に犯罪、運用に難しさ 過去には海外逃亡で法改正も

特殊詐欺でだまし取った現金を持ち逃げした「出し子」に報復したとして、警視庁組織犯罪対策特別捜査隊が、特殊詐欺グループの指示役とみられる沖縄県石垣市、職業不詳の男性被告(27)=窃盗罪で実刑判決、控訴中=を傷害と逮捕監禁容疑で再逮捕したことが捜査関係者への取材で判明した。容疑者は事件当時、別の特殊詐欺事件で保釈中だった。 保釈を巡っては、身柄拘束が長期化する「人質司法」への批判もあり、近年は認められる割合が上昇しているとされる。一方で、保釈中に起きたとされる今回の事件は、運用の難しさを改めて示している。 保釈は、被告側の申請を受けた裁判所が逃亡や証拠隠滅のおそれ、事件の重大性などから総合的に可否を判断する。2009年に裁判員裁判が始まり、身柄拘束の必要性の吟味が慎重になったとされる。司法統計によると、地裁判決前の保釈率は09年の2割から24年に3割に上昇した。 一方、19年には保釈された日産自動車前会長の被告が海外に逃亡。これがきっかけとなり、改正刑事訴訟法が23年に施行された。 改正法では、指定した住居に戻らない被告に適用される「制限住居離脱罪」も新設された。捜査関係者によると、今回再逮捕された容疑者は許可無く沖縄県石垣市へ転居しており、抵触する可能性もあるという。 元裁判官の水野智幸法政大法科大学院教授(刑事法)は「保釈されるべき人の申請が認められないことなど、保釈の判断は非常に難しい。裁判官は事件や被告を見る目をより養う必要がある」と話す。【長屋美乃里】

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