「ルフィ」などと名乗る指示役のもとで、特殊詐欺や強盗に関与したグループの幹部に対する判決が23日、東京地裁で言い渡される。「ルフィ」事件とはなんだったのか。過去の取材などから経緯を振り返る。 事件が注目されたのは、2023年1月のことだった。東京都狛江市の住宅で当時90歳の女性が強盗に襲われて死亡。警視庁が逮捕した実行役の携帯電話を調べたところ、「ルフィ」や「キム・ヨンジュン」と名乗る指示役の存在が浮上した。 闇バイトに応募した、面識のない者同士が集まって強盗に入る。そんな手口の事件が狛江市の事件よりも前から、関東や関西、中国地方で相次いでいた。警視庁は、同じグループによる犯行とみていた。 「ルフィ」ら指示役のグループは、フィリピンの収容施設で拘束中の男4人で構成。そのうちの1人で、23日に判決が言い渡される小島智信被告(47)は、強盗の実行役を集める「リクルーター」を務めたとされる。 4人は、マニラにある廃ホテルなどを拠点に、日本の高齢者らにうその電話をかけてキャッシュカードを盗むなどした詐欺グループを率いていた。 元メンバーという男性によると、拠点では、約80人の日本人がマニュアルや住所録をもとに、1人あたり1日50件ほど特殊詐欺の電話をかけていた。 週休2日で、歩合制の報酬は1週間に5万~40万円ほど。グループによる詐欺の被害額は、60億円を超えるとみられている。 フィリピン当局は19年、この廃ホテルにいた日本人36人の身柄を拘束。その後幹部4人も摘発され、入国管理局の「ビクタン収容所」に入れられた。 収容所で再び顔を合わせた4人は、カネを得る手段をより凶悪な強盗に切り替え、収容所から携帯電話で実際に強盗現場に行く「実行役」に指示するように。こうしたなかで、狛江市の強盗致死事件が起きた。 収容施設への通信機器の持ち込みは禁じられていたが、施設関係者は取材に「職員に金を払えば何でも手に入る。エアコン付きの『VIPルーム』で快適な暮らしができる」とした。 フィリピン当局は狛江市の事件を受け、4人の強制退去を決定。4人は23年、逮捕・起訴された。 SNSを介して報酬目当てで集まった実行役は、個人情報を握られ指示を断れずに詐欺や強盗に手を染め、事件ごとに入れ替わる――。警察は、こうした形態の犯罪集団を「匿名・流動型犯罪グループ」と新たに定義。取り締まりを強めている。