電撃的な合意に至った日米の関税交渉ですが、日本による5500億ドル(日本円にして80兆円)の投資のあり方は一体、どうなるのか?交渉の当事者でもある商務長官のハワード・ラトニック氏へのBloombergによる独占インタビューです。 ■利益の9割はアメリカ、1割は日本に インタビュアー: 日本が5500億ドルを投資するという革新的な資金調達の仕組みについてお聞かせください。この基金は具体的にどのような形になるのでしょうか? ラトニック長官: この基金は非常に画期的なものです。簡単に言えば、アメリカがプロジェクトを選び、日本がその実行に必要な資金を提供するという形になります。例えば、アメリカで抗生物質を製造したいとしましょう。 現在、アメリカ国内では抗生物質をほとんど製造していません。もし大統領が「アメリカで抗生物質を作ろう」と決定すれば、日本がそのプロジェクトに資金を提供します。 インタビュアー: なるほど。資金提供を受けたプロジェクトの利益配分はどうなるのでしょうか? ラトニック長官: 運営は企業に任せ、得られた利益はアメリカの納税者に9割、日本には1割が配分されます。これは実質的に、日本がこの公約によって関税率を引き下げたことを意味します。「トランプ大統領やアメリカが望む、国家の安全保障上重要なものをアメリカ国内に建設するなら、それを支援し、あなたの味方になります」という日本の意思表示なのです。 インタビュアー: 石破総理はこれを「融資保証」と表現していますが、それ以上のものということでしょうか? ラトニック長官: もちろん、それ以上です。これはエクイティ(株式)や融資保証など、多様な形態を含みます。日本は、アメリカが選定したプロジェクトを実現させなければなりません。 例えば、アメリカが1000億ドル規模の半導体工場をアメリカ国内に建設したいとすれば、日本はそのプロジェクト全体に、エクイティやローンなど、いかなる形であれ1000億ドルを提供する必要があります。 インタビュアー: それは日本企業が資金を出すということですか? ラトニック長官: いいえ、違います。誰でもいいのです。日本はあくまで「資金提供者」であり、「運営者」ではありません。ですから、日本の特定の企業が工場を建てるという話ではないのです。 皆さんが混乱しているのは、トヨタのような日本企業が来て工場を建てるような話ではない、という点ですね。これは文字通り、アメリカがジェネリック医薬品、半導体、重要鉱物などをアメリカ国内で作りたいと決めた場合に、日本が資金面で支援するというモデルです。 インタビュアー: こういったモデルは、これまでにも存在したのでしょうか? ラトニック長官:もちろんです。だから 私が政権に加わったのです。このアイデアを私が1月に思いつきました。日本はドナルド・トランプが望むように「完全に」市場を開放するつもりはないので、別の方法をとる必要がありました。 そこで私は4000億ドルの基金を提案し、日本が大統領とアメリカに対し、国家の安全保障に貢献する物を作る上での資金を提供・支援するというモデルを作り上げました。