トランプ米大統領が全米の職場で進める移民摘発の一環として、建設現場でも移民捜査が行われ、業界に大きな混乱をもたらしている。アラバマ州のある建設現場では、移民・税関捜査局(ICE)による逮捕を恐れて労働者のおよそ半数が数日間出勤せず、工期は3週間遅れる見通しだ。シンクタンクによると米国に無許可で滞在している推定1100万人のうち約140万人が建設業に従事しており、どの業種よりも多い。多くの米国生まれの労働者には必要な技能を持っておらず、こうした労働者の代替は困難だという。 アラバマ州モービル近郊で建設中のこのレクリエーション施設。11月1日の完成予定に向け、工事は順調に進んでいた。 だが現場監督によれば、移民・税関捜査局(ICE)による摘発を恐れ、作業員の約半数が恐怖で現場を何日も離れてしまい、3週間の遅れが見込まれている。 「この現場は地域社会にとって非常に重要な案件だ。完成できなければ、住民が損失を被ることになる」 現場監督のロビー・ロバートソンさんはロイターの取材に対し、5月末、370キロ離れたフロリダ州で建設現場に強制捜査が入ったことが作業員らに恐怖を与えたと語った。 「強制捜査の話を耳にして、多くの作業員が来なくなった。 何人かは戻ってきたが、いまでも半分の人数で進めており、作業効率が大幅に悪化している」 トランプ氏が全米の職場で進める移民摘発は建設業界に大きな混乱をもたらしている。 ロバートソンさんによると、完工が予定日の11月1日から遅れると1日に4000ドルの違約金が課せられるため、8万4000ドル(約1246万円)の追加費用が発生する可能性がある。 「フロリダの現場はここからかなり離れているから、もっと近い場所にも工事現場はたくさんあるはずだ。 他の現場も、同じような影響を受けていることは間違いない」 超党派のシンクタンク、移民政策研究所によると、米国に不法滞在する約1100万人のうち約140万人が建設業界で働いており、これは他のどの業界よりも多い。 建設業界の経営者らは、多くの米国人作業員には必要な技能がなく、移民労働者の代わりを見つけるのは難しいと訴えている。 ロバートソンさん 「ヒスパニック系の人々はこの仕事に進んで取り組んでくれている。重労働もだ。 言った通り、私はトランプ支持者だが、やり方には工夫の余地があると思っている。 ただ、強制捜査が――正解だとは思えない」 国土安全保障省の報道官は、ICEの強制捜査が労働搾取や人身取引などの抑止に役立っていると説明している。 ロバートソンさんによると、自身の会社および下請け業者は政府のプログラムを通じて労働者の在留資格を確認済みだという。就労資格をオンラインで確認できる仕組みで、広く利用されている。 移民の強制送還は、世論にも影響を及ぼし始めている。 7月のロイター/イプソス世論調査によると、トランプ氏の移民政策に関する支持率は41%となり、第2次トランプ政権始まって以来の最低水準となった。