斎藤元彦・兵庫県知事らの疑惑を追及していた竹内英明元県議(当時50歳)が今年1月に死亡したことを巡り、竹内氏の妻は8日、政治団体「NHK党」党首の立花孝志氏(57)を竹内氏に対する名誉毀損(きそん)容疑で刑事告訴し、県警に受理されたと明らかにした。県警は立花氏に刑事責任を問えるか捜査を進める。 「夫の代わりに声を上げられるのは私しかいない」。亡くなった竹内氏の妻は記者会見で、立花氏の刑事告訴に踏み切った理由をこう語った。 竹内氏への誹謗(ひぼう)中傷は今なお交流サイト(SNS)上で続いているといい、その言葉の鋭さに自身も恐怖を感じている。 インターネット上で広がり、止めたくても止められぬ言葉の暴力。「心の傷が癒える間もなく、次の攻撃が襲ってくる。希望も生きる力も失い、絶望して夫は自ら命を絶った」 その発端となったのが立花氏による数々の発信だとし、声を震わせながら「夫について立花氏が言ったことは、全て間違いだ」と訴えた。 竹内氏は県議として5期目を迎え、斎藤氏らの疑惑の究明に携わっていた。「議員は行政の監視が役割」と語り、自身の仕事に誇りを持って調査に臨んでいた。だが疑惑が明るみに出ることになった「黒幕」と立花氏に呼ばれた直後、事務所にはメールや電話による誹謗中傷が押し寄せるようになった。 竹内氏は県議を辞職し、「(自分は)逃げた」「負けた」とこぼすように。死亡した後も立花氏から「逮捕される予定だった」などと事実ではない発信がされた。 夫が亡くなったことを受け入れられない。悲しみに沈む一方、夫の仕事ぶりを誰よりも知っている自分が不名誉を晴らさねばという気持ちが芽生えてきた。「心の中で生き続けている夫の尊厳を守りたいと思う気持ちが強くなった。私が夫の代わりに声を上げないといけないと気づいた」 立花氏を告訴したことで、立花氏を支持する人たちから再び中傷を受けるのではと感じている。この日の記者会見もプライバシー保護のため、記者との間についたてを挟んで行われた。 そのついたての向こうで、妻は声を振り絞った。「人の尊厳を奪うことについて、立花氏はきちんと責任を問われるべきだ」【山田麻未、松原隼斗、柴山雄太】