尹前大統領夫人の拘束起訴で山越えた韓国特検

尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領夫人のキム・ゴンヒ女史に関する疑惑を捜査するミン・ジュンギ特別検察官(特検)チームが、株価操作などの3つの容疑を適用して「捜査の頂点」に位置するキム女史を拘束起訴したことで、同特検の捜査は開始から2カ月で第2ラウンドに入った。特検チームは当面、公訴維持に注力する一方、既存の特検法の捜査対象とともに、捜査過程で新たに認知したキム女史の売官売職疑惑などの捜査にも本格的に乗り出す方針だ。 特検チームは29日、キム女史をドイツモーターズ株価操作(資本市場法違反)、ミョン・テギュンによる無償世論調査(政治資金法違反)、コンジン法師・統一教による請託疑惑(特定犯罪加重処罰法の斡旋収賄)の疑いで拘束起訴した。特検チームは、ドイツモーターズ株価操作への加担や違法政治資金受け取りなどのキム女史の犯罪収益を10億3000千万ウォン(約1億900万円)と算定し、追徴補填も請求した。8月12日にキム女史が拘束された際に適用された容疑が、事実上そのまま維持されたわけだ。 これまでに証拠が十分に収集された核心容疑でキム女史を拘束起訴したことで所期の成果を上げた特検チームの捜査は、まずは金品受け取りを通じたキム女史の人事介入疑惑の実体の究明が焦点となるとみられる。キム女史が2022年3月に、瑞熙建設のイ・ボングァン会長から、長女の婿である元検事のパク・ソングン弁護士の首相秘書室長任命の対価として「ヴァンクリーフ・アーペル」のネックレスを受け取った、という疑惑が代表的な例だ。実際に、ネックレス授受の3カ月あまり後、パク弁護士は首相秘書室長に任命されている。これは、キム女史の拘束前被疑者尋問(令状実質審査)の際、特検チームがこの請託内容の記されたイ会長の自首書や実物のネックレスなどを公開したことで公になった。健康上の理由でまだイ会長の事情聴取は行われていないとされているが、特検チームは近いうちにイ会長を呼んで事実関係を集中的に追及するとみられる。 イ・ベヨン国家教育委員長がキム女史に純金10匁(もんめ:1匁=3.75g)の金の亀を渡し、その見返りに公職に任命されたという疑惑も、特検チームの捜査は避けられない。すでに特検チームは、キム女史一家の楊平(ヤンピョン)の公興(コンフン)地区開発特恵疑惑の捜査の過程における、キム女史の母親のチェ・ウンスン氏に関連する家宅捜索で、金の亀とともにイ委員長が尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領夫妻に宛てたものと推定される手紙を発見している。特検チームは押収物の分析が終わり次第、近くイ委員長を呼んで金の亀を渡した経緯などを追及する予定だ。 特検チームは、警護用ロボット犬事業を展開するソ・ソンビン氏が、2022年に事業上の便宜を得るために、キム女史に5000万ウォン相当の「ヴァシュロン・コンスタンタン」の時計を渡した疑惑についも、先日強制捜査に着手し、捜査を急いでいる。 特検法の主要な捜査対象となっているソウル楊平高速道路特恵疑惑、大統領室官邸工事特恵疑惑などは現在、特検チームによる捜査の真っ最中だ。ただし、キム女史が不当に介入したことをどれだけ直接的に明らかにできるかが、特検チームの捜査の課題だ。 特検チームがキム女史に収賄容疑を適用するかどうかにも、関心が集まっている。キム女史が金品を見返りに人事請託をおこなったり、行政業務全般に介入したりしていたとしても、収賄罪は公務員が金品を受け取ってはじめて成立する身分犯であるため、公職者ではないキム女史には同容疑が適用できない。尹前大統領がこれらを事前に認知して共謀していた場合には、収賄罪を適用するかどうかも検討しうるが、現在のところキム女史はもちろん、尹前大統領も特検チームの取り調べそのものに応じていないため、共謀関係の究明は容易ではないとみられる。特検チームは近く、尹前大統領の逮捕令状を再請求し、裁判所から令状が発行され次第、執行にあたる計画だという。 クァク・チンサン記者 (お問い合わせ [email protected] )

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