全国唯一の4地検抱える北海道 「北の大地」で奮闘続ける札幌地検特別刑事部

豊かな自然と観光資源を誇る北海道。農業や漁業といった第1次産業を抱え、東京、名古屋、福岡と並ぶ証券取引所を札幌に有するなど、経済規模は大きい。都道府県で唯一、複数の地検(4つ)があることでも知られるが、中核を担うのが札幌地検だ。「北の大地」で捜査に奔走してきたその歴史を振り返る。 ■拓銀事件で好スタート 地検は全国に50庁あり、各都府県の県庁所在地に庁舎を構えている。例外は国土の2割を超える広大な面積を持つ北海道で、札幌地検に加え道南の函館市に函館地検、道東の釧路市に釧路地検、道北の旭川市に旭川地検が、それぞれある。 経済・政治の中心である札幌市を含む道央を管轄する札幌地検には、平成8年に特別刑事部が設置された。その翌年に起きたのが、日本経済大転換の「導火線」となった北海道拓殖銀行(拓銀)の経営破綻だ。 バブル崩壊による不況が生んだ戦後初の都市銀行の倒産は金融不安を加速させ、山一証券の自主廃業を経て金融機関の破綻ドミノ、銀行への公的資金注入、金融再編へとつながっていく。 現在の3メガバンク中心の体制となる以前、都市銀行は13行あった。この旧13都銀のうち、特捜部を擁する東京、大阪、名古屋の3地検の「守備範囲」である3大都市圏に本店を置かない唯一の存在が拓銀だった。 情報収集に着手した札幌特刑部は北海道警とタッグを組み、破綻から1年半後の11年、95億円の不正融資を行った特別背任容疑で元頭取ら旧経営陣を立件。本格始動の舞台として申し分なかった一方、真価が問われる局面でもあっただけに、捜査を終えた札幌地検の寺尾淳検事正(当時)は「非常に難事件だった。ほっとしている」とコメントしている。 昭和の終焉(しゅうえん)とともに共産主義、社会主義が下火となり、左翼によるゲリラ事件などの公安事件が激減。このため大規模地検に準じる規模の全国10地検で、公安部が特刑部に衣替えしたことは、周知の通りだ。 ある法曹関係者は特刑部について「各地検に配分された部長ポストの総数を減らさぬため数合わせでつくった部署。公安部が不必要となったのなら部自体をなくして他部に検事を振り分け、拡充した方がよかった」と揶揄(やゆ)するが、史上初となった都銀トップの経営責任追及という実績は、全特刑部の中でも特筆すべきものといえる。

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