英で難民流入深刻化、首相苦境に 「国境の危機」で政府に怒り

【ロンドン時事】英国に流入する不法移民や難民が後を絶たず社会問題化する中、効果的な対策を取れない政府に国民の不満が強まっている。 スターマー首相は「(抑制へ)対応を加速させる」と約束するが、「国境警備の危機」(野党)が続けば一層の苦境に立たされるのは必至だ。 英仏海峡を小型ボートで渡る亡命申請者や不法移民の問題は、前の保守党政権でも大きな課題だった。しかし、昨年発足したスターマー労働党政権下でさらに増加。政府統計によると、亡命申請者数は今年6月までの1年間で11万1000人に上り、過去最高を記録した。 亡命申請者は決定までの期間、ホテルなどに一時収容されるが、この「難民ホテル」に近隣住民らが反発。各地で閉鎖を求めるデモが相次ぎ、法廷闘争にも発展した。8月末にもロンドン中心部でデモがあり、一部は警官に暴力を振るうなどして逮捕された。 国民からの圧力にさらされる政府は1日の議会で、難民が祖国から家族を呼び寄せるための申請受け付けを停止すると発表。首相はBBCの番組で、「難民ホテル」を2029年までに閉鎖するとの当初目標を前倒しする計画を明らかにした。 難民抑制へ厳しい姿勢をアピールした形だが、閉鎖が何年までに行われるのか、収容者をどこに移すのかなど具体的な中身は不明。労働党は支持率調査で、反移民を唱える右派ポピュリスト政党「リフォームUK」に大きく後れを取っており、早期に成果を示したい焦りも透ける。

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