「本当は前川君を見ていなかった」福井中3殺害で再審無罪、男性はなぜうその証言をしたのか 事件から39年の告白と、元裁判官が感じた疑問、後悔、そして失望

「本当は前川君を見ていなかったのに、見たと言った」。裁判で有罪につながる証言をした男性はこう語り、審理に携わった元裁判官は事件を「砂上の楼閣」と評した。1986年に福井市で女子中学生が殺害された事件で逮捕された前川彰司さん(60)は、有力な物証がない中「事件後、服に血を付けた前川さんを見た」などという男性らの証言で有罪となり、服役した。この春、やり直しの裁判(再審)が開かれ、事件から39年を経て、8月1日にようやく無罪が確定した。ただ、再審無罪となっても福井県警や検察は謝罪や検証をする意向を示さないまま。証言をした男性や元裁判官の話から、事件をひもといた。(共同通信=中野湧大、片山歩) ※筆者が音声でも解説しています。「共同通信Podcast」でお聴きください。 ▽「あのときは俺といた」警察で聞いた驚きのストーリー 事件は1986年3月19日の夜、福井市の市営団地の一室で起きた。この部屋に住み、中学校の卒業式を終えたばかりだった15歳の女子生徒が、顔や首を多数刺されるなどして殺害された。福井県警はむごたらしい現場の様子から、薬物中毒者や非行少年グループの関与を疑った。しかし、有力な物証はなく、捜査は難航した。

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