「疲れた。日本に帰りたい」。摘発を逃れるのに3年以上の海外逃亡を続けていた犯罪組織の幹部は、帰国する理由について、そう電話で吐露したという。 警視庁暴力団対策課は9日、住所・職業不詳、蓮見晋平容疑者(42)を電子計算機使用詐欺容疑などで逮捕したと発表した。特殊詐欺グループでうその電話をかける「かけ子」を統括する立場だったとみられる。 逮捕容疑は2022年5月14日、仲間と共謀し、茨城県内の女性(71)に市職員を装って「介護保険料の還付金がある」とうその電話をかけ、現金約50万円を銀行口座に振り込ませてだまし取ったなどとしている。黙秘しているという。 警視庁は22年6月、拠点とする東京都世田谷区のマンション一室を捜索し、これまでに暴力団組員ら11人を摘発していた。蓮見容疑者は同5月下旬にベトナムに出国し、その2年後にタイに移動して滞在していたが、25年8月末に警視庁に「帰国する」と連絡。8日に羽田空港に到着後、逮捕された。 警視庁によると、この特殊詐欺グループはかけ子や、被害金を口座から引き出す「出し子」など四つの役割に分かれており、高齢女性を標的にうその電話をかけたとされる。22年3月からの3カ月で、30都道府県の118人から計1億円超をだまし取ったとみられる。