(CNN) 米国の保守系政治活動家チャーリー・カーク氏が殺害された事件。銃撃犯の捜索にくぎ付けになった大勢と米国人と同様に、ユタ州に住む父親も当局が公開した容疑者の写真や映像を目にしていた。 映像の男はワシと星条旗をあしらった黒いTシャツ姿で、銃撃後にユタ州の大学の屋上から飛び降り、雑木林の中に走り去る様子が映っていた。顔の一部は濃い色のサングラスと野球帽で隠れていた。 しかし、父親はその男に見覚えがあった。 「タイラー、これは君じゃないのか? 君のように見える」。捜査状況を知る法執行当局者によると、父親は息子にそう尋ねたという。 法執行当局者がCNNに明かしたところによると、タイラー・ロビンソン容疑者(22)は父親にカーク氏を撃ったことを告白した。 父親が息子に自首を促すと、ロビンソン容疑者は「自首するくらいなら自殺する」と答えたとされる。 父親はロビンソン容疑者を説得して、ワシントン郡保安官事務所と連邦保安官局で働く若者向けの牧師に犯行を打ち明けるよう説いた。 最終的には家族の友人が、ユタ州オレムの銃撃現場から3時間以上離れたワシントン郡保安官事務所に通報。保安官事務所はこの情報をユタ郡当局と連邦捜査局(FBI)に伝えた。 その夜、ロビンソン容疑者は身柄を拘束された。容疑者の正確な居場所は「わからない」と当局が公表してから数時間後の出来事だった。ユタ州で11日午後10時に拘束に至るおよそ2時間前、州と連邦の当局者は捜索への協力を呼び掛ける記者会見を開いていた。 ユタ州のコックス知事は12日午前の記者会見で、「身柄を確保した」と明らかにした。 FBIにはその時点で7000件を超える手がかりや情報が寄せられており、知事によると、2013年のボストン・マラソン爆破事件以降で最多となった。だが大きな突破口につながったのは、ロビンソン容疑者の父親と一家の友人から寄せられた1件の情報だった。 当局はロビンソン容疑者の捜索に30時間あまりを費やしていた。ロビンソン容疑者はユタバレー大学で行われた3000人規模のイベントで、建物の屋上からカーク氏を銃撃。約137メートル離れた場所からカーク氏の首を撃って殺害したとされる。 200件近い聞き取りや20に上る法執行機関の協力、10万ドルの懸賞金の発表、そして2人が相次いで聴取されては釈放される展開を経て、FBIとユタ州公安当局はついに、カーク氏を狙った襲撃の実行犯を捕らえたと考えるに至った。