米国土安全保障省、ポケモンの映像で移民拘束をPRする動画を公開 ファンは訴訟を求めるもポケモン元法務責任者は否定的な見解を示す

米国国土安全保障省が、アニメ『ポケットモンスター』のテーマ曲や映像とともに、手錠をかけられ逮捕される人々の映像が使われた動画を公開した。この動画に対し、ファンからは株式会社ポケモンが訴訟を起こすべきだとする声が上がっているが、同社の元最高法務責任者は、そのようなことは起こらないだろうと述べている。 今週ソーシャルメディアに投稿されたこの動画は、法執行官や手錠をかけられた人々の姿にぼかしを入れた映像と、アニメ『ポケットモンスター』の映像を組み合わせたものだ。投稿には「Gotta Catch ’Em All(全部ゲットだぜ)」というキャプションが添えられ、ポケモンシリーズの有名なキャッチフレーズと、米国で物議を醸しているICE(移民関税執行局)職員による一連の逮捕の現状が結びつけられている。 Xでの反応はさまざまだが、ポケモンや任天堂の公式アカウントへのメンションとともに、知的財産の使用に関して法的措置を取るよう求めるコメントが多く見られる。しかし、株式会社ポケモンの元法務責任者であるドン・マクゴーワンはIGN USに対し、そのような措置が取られる可能性は極めて低いと考えていると述べ、その理由を挙げた。 「いくつかの理由から、彼らがこの件で何か行動を起こすとは思えません」とマクゴーワンはIGN USに語っている。「まず、The Pokémon Company Internationalの名前がメディアにほとんど出ないことを考えてみてください。彼らは表に出ることを極端なほどに避けるタイプで、ブランドそのものを前面に出すことを好みます」 「第二に、アメリカにいる幹部の多くはグリーンカード(米国永住権)で滞在しているんです」と彼は続けた。「仮に私がまだ会社にいたとしても、この件には手を出さなかったでしょう。私は、私の知る中で最も訴訟に積極的な最高法務責任者ですがね。この件は数日で収束し、彼らは黙って見過ごすでしょう」 ポケモンがほかのケースで訴訟に非常に積極的であることを考えれば、今回もし実際に何の対応も取られなかった場合、一部のファンにとってその沈黙は驚きに映るかもしれない。事実、マクゴーワンは過去に、ポケモンの知的財産が無断使用されていることをメディアで報じられた際にはすぐに行動を起こしたと述べている。 ポケモンにとってより単純な方策としては、この投稿自体に対して著作権侵害の申し立てを行うことが考えられる。実際、ラッパーのジェイ・Zは今年8月、自身の楽曲「Public Service Announcement」が移民取り締まりの映像を含む同様の募集動画で使用された際に、その手段で成功を収めた。「カルテルを狩れ、アメリカを救え」と題された投稿は現在も残っているが、動画は「著作権者からの申し立てにより無効」となっている。 今回の動画でポケモンのブランドが大々的に使用されていることは間違いない。テーマ曲が使われているだけでなく、サトシが登場するアニメの映像も含まれており、最後には、有罪判決を受けた大勢の人々がポケモンカードとして映し出される場面さえある(彼らの弱点が「こおりタイプ」、すなわち移民関税執行局の略称であるICEだとするマークまで添えられている)。 あるユーザーは、「世界中の力を任天堂とポケモンに結集して、ビジュアルを無断使用した国土安全保障省を徹底的に訴えるべきだ!」と書き込んでいる。 「ここに映ってるのは家族がいる人間なんだよ」と別のユーザーは記している。「社会として一体何をやってるんだよ。こんなの真剣に受け止められるわけがない……人々を捕まえて拘束することを、ただのポケモンのミームとして楽しんでるっていうのか?」 IGN USはThe Pokémon Company InternationalおよびNintendo of Americaに対し、今後の対応を含めコメントを求めている。

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