学校で起こる性暴力について、丁寧な取材をもとに描いたマンガ『言えないことをしたのは誰?』(現代書館)。作者のさいきまこさんは、教師による児童・生徒への性暴力の背景には、学校や社会に根深く残る構造的な問題があると語ります。その課題について伺いました。※前編〈「特別なのはお前だけ」恋愛に見せかけた教師による性加害――保健室で明かされる被害の一端をマンガ家が描いた〉から続く ■教師と生徒の圧倒的な「権力関係」 ——『言えないことをしたのは誰?』では、一人の中学校教師が何年にもわたって複数の女子生徒に性加害を行っていました。その背景には、どのような要因があるのでしょうか? まずは、教師と生徒という圧倒的な「権力関係」が大きく関係していると思います。教師は成績や内申、部活動の評価権を握っており、子どもたちにとって逆らいにくい存在です。その立場を利用すれば、子どもを支配下に置くのは容易です。 加えて、学校組織には「不祥事を隠したい」という体質が根強く残っていると感じます。教師という職業を神聖視し、「教師による性加害があると認めたら教育の信頼が崩壊してしまう」といった思い込みがあるのかもしれません。 特に、教育や部活動などで実績をあげた教師にはものが言いにくい、という風潮があるようです。こうした空気が、学校における性加害を温存させてきたのだと思います。 ——学校現場の認識にも課題があるのですね。 私が取材で出会った養護教諭に「教師による性加害をテーマにマンガを描きたい」と伝えたところ、「自分のまわりで、そんな教師は見たことも聞いたこともない」と強く拒絶し、まるでタブーに触れてしまったかのように感じました。これだけ教師による性加害が報道されているにもかかわらず、「一部の特殊な例に過ぎない」といった認識の学校関係者は、まだまだ大勢います。 しかし、自分の回りで被害者の声が聞こえなかったとしても、それは「存在しない」のではなく、すぐには「声を上げられない」だけかもしれません。性被害は“時限爆弾”のように遅れて顕在化することが珍しくないからです。この理解が欠けているため、学校内での性暴力が見過ごされてしまうケースもあるのではないでしょうか。