警察官をかたるうその電話で現金をだまし取ったなどとして、警視庁特別捜査課は、組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)などの疑いで、中国籍の会社員、銭凌容疑者(38)=東京都江東区=ら3人を逮捕した。銭容疑者は、カンボジアを拠点とする特殊詐欺グループのトップで、中国の犯罪組織のメンバーとみられる。このグループが関与した詐欺被害は令和6年8月~7年1月の約半年間で、約500件、約50億円に上るとされ、同課が詐取金の流れなどの裏付けを進めている。 ほかに逮捕されたのは、住所不定の無職、宮代祥平容疑者(31)と、中国籍で東京都中央区の職業不詳、盧璐容疑者(36)。同課はいずれの認否も明らかにしていない。銭容疑者を中心とする匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)とみて、実態解明を進める。 宮代容疑者は、カンボジアの拠点から日本に詐欺電話をかけていた「かけ子」らの「管理役」で、盧容疑者は被害金の資金洗浄(マネーロンダリング)などを指示する立場だったとされる。 銭、宮代両容疑者の逮捕容疑は5年9~12月、宮城県の60代男性と静岡県の60代女性に、警察官を装う電話で「口座が不正に利用されている。調査するため、現金を移す必要がある」などと噓をいい、現金約290万円と約100万円相当の暗号資産ををだまし取ったとしている。 盧容疑者は銭容疑者らと共謀して、5年10~11月に沖縄県の70代男性から同様の手口で詐取した約3232万円のうち、1千万円を東京都内のマンションを購入する手付金などとして不動産会社に振り込み、犯罪収益を隠そうとしたとしている。 特捜課によると、グループはカンボジア拠点で、5年5月ごろから活動。銭容疑者は主に日本に居住し、遠隔で指示を出していたとみられる。特殊詐欺の被害金はかけ子の報酬などとして分配された可能性がある。 同課はこの拠点の設立に、指定暴力団住吉会系幹部の男(30)が主導的に関与していた可能性もあるとみて捜査。男は別の特殊詐欺事件を巡り、宮代容疑者とともに摘発されていた。捜査本部は、日本の暴力団と中国の犯罪組織との関係性も含めて調べる。 ■トクリュウの「首魁」摘発に総力