非暴力による防衛は可能か ジーン・シャープを現代に生かす

暴力が世界中に蔓延し、戦争・紛争が絶えない。ロシアによるウクライナ侵略、イスラエルによるガザへの攻撃、世界各地で続くテロ、内戦……。そうした危機や不安を背景に、日本でも憲法9条の改正や防衛力を増強する動きが強まっている。私たちはこうした流れに抗することができるのか。非暴力による平和・市民的防衛を追求したジーン・シャープの思想を手がかりに、シャープの同僚であったジャミラ・ラキーブ氏、シャープの理論をセルビアで実践したスルジャ・ポポヴィッチ氏、立命館大学国際平和ミュージアム館長の君島東彦氏との対話を通して考えてみたい。 内閣府が2022年11月に行なった「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」には、次のような質問項目がある。 「現在の世界の情勢から考えて、日本が戦争を仕掛けられたり、戦争に巻込まれたりする危険があると思うか」 それに対して、「危険がある」と答えた人は38・1%、「どちらかといえば危険がある」と答えた人は48・1%に上った。つまり、程度の差はあれ、何らかの安全保障上の危険を感じる人が86・2%を占めていることになる。 同じ世論調査では、次のような興味深い質問もなされた。 「もし日本が外国から侵略された場合、どうするか」 それに対しては、「自衛隊に志願する」と答えた人が4・7%、「自衛隊に志願しないものの、何らかの方法で自衛隊を支援する」が51・1%。一方、「侵略した外国に対して、武力によらない抵抗をする」が17・0%、「侵略した外国に対して、一切抵抗しない」が1・4%、「何ともいえない」が24・3%となっている。 総じて、日本では8割以上の人が戦争に巻き込まれる危険性を感じていて、6割近くの人が「いざとなったら自衛隊の武力を使って応戦すべき」と考えていると言えるだろう。同時に、「武力によらない非暴力抵抗をすべき」と考えている人も、少数派ながら17%存在することを示している。

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