生産者が丹精を込めて育てた農作物などを畑から盗む卑劣な犯罪が全国で相次いでいる。警察庁によると、その数は年間で約3千件。警察に届けていない被害もあるとみられ、実態はさらに膨らむ可能性がある。特に京都では6月以降、ブランド京野菜の九条ねぎを中心とする盗難事件が続く。猛暑による不作に直面していた農家にとって「泣きっ面に蜂」ともいえる事件。「許せない」。関係者は怒りをにじませ、次なる対策を急いでいる。 ■「明らかに個人消費ではない」 京都府南部の久御山(くみやま)町などの畑では6月以降、計約3・5トンの九条ねぎが盗まれる事件が相次ぎ発生。数百キロ単位で盗まれる被害が続き、早くから「明らかに目的は個人消費ではない」(府警幹部)との見方があった。 府警は9月、同町の畑から約216キロ(約19万円相当)を刈り取って盗んだとする窃盗容疑で、九条ねぎを栽培していた同業の男(28)=京都市伏見区=を逮捕。捜査関係者によると男は「今年は自分の畑での収穫量が少なく、犯行を決意した」などと説明した。しかし男の逮捕後も、新たに同府八幡市で約150キロの九条ねぎの窃盗事件が発生。模倣犯の可能性もあるとして、府警や関係団体は警戒を強めている。 ■全国で相次ぐ事件 警察庁は令和2年からの犯罪統計で、「田畑」での窃盗事件の分類を始めた。統計には農機具の窃盗なども含まれるものの、こうした古典的な犯罪は年間で約3千件も起きているという。 茨城県笠間市の果樹園では8月、収穫前のナシ「幸水」約3200個(87万円相当)が盗まれた。窃盗の疑いで逮捕されたベトナム国籍の男は「ベトナム人コミュニティーで果物がほしい人を募って売っていた」などと説明した。 滋賀県や山梨県でも同月、収穫直前のシャインマスカットが盗まれる被害が確認されている。 京都でも、九条ねぎ以外にもナスやトマト、果物などが盗まれており、京都府警が認知している件数は8月末時点で計25件。前年同期比で19件増加し、被害総額は約210万円だった。このほか亀岡市や京丹後市でコメが倉庫から盗まれる事件もあったという。 ■電池型カメラが有効