米司法省、エヌビディア製チップを中国に不正輸出したAIインフラ事業者を訴追

米司法省は、ブライアン・レイモンドと3人の共犯者が、エヌビディアの希少なチップを中国企業に販売したとして訴追した。レイモンドは、米アラバマ州ハンツビル拠点のBitworks(ビットワークス)の創業者で、人工知能(AI)インフラ事業とコンサルティングを手がけていた。 ■米国拠点の正規パートナーが主導、約6億3000万円規模のチップを中国に不正輸出 今月初めに提出された連邦起訴状によれば、エヌビディアのパートナーであるレイモンドは、同社の最上位クラスのAI向けプロセッサーやHP製スーパーコンピューターを中国の顧客に違法に販売していた。 レイモンドは、香港に登録された中国企業に向けてチップを売るため、3人の共犯者と共謀したとされる。起訴状によれば、共犯者には中国籍の2人と、香港生まれの米国籍の1人が含まれている。4人が販売したエヌビディア製チップは最大350基で、HPのスーパーコンピューターは10台にのぼり、総額はほぼ400万ドル(約6億3000万円。1ドル=157円換算)に達していた。この起訴に関しては独立系メディアのCourt Watchが最初に報じた。 ■バイデン政権の厳格な規制下で強行、入手困難なH200・H100など高性能GPUが流出 バイデン政権は2022年、AIシステムやスーパーコンピューター向けチップを販売する業者に対して、産業安全保障局(BIS)からのライセンス取得を義務づける法律を施行した。このため、最強クラスのエヌビディア製チップを中国に輸出することは事実上ほぼ不可能になっている。司法省によれば、AIやスーパーコンピューティング分野で需要が急増する中、4人はH100・H200・A100など中国への輸出が禁止されているエヌビディア製GPUを販売していた。違法販売は2023年に始まり、今月まで続いたとされる。 フォーブスは、レイモンド本人および被告側の弁護士に本記事の公開時点で連絡を取れていない。4人はまだ罪状認否を行っておらず、有罪は確定していない。裁判記録によれば、逮捕されたのは1人のみとされている。司法省は係争中の事件であるとしてコメントを控えた。Bitworksもコメント要請に応じていない。 エヌビディアの広報担当ジョン・リッツォは、密輸された製品の利用について「技術的にも経済的にも成り立たない」と述べ、「データセンターは巨大かつ複雑なシステムであり、密輸行為は極めて困難でリスクも大きい。当社は規制対象製品へのサポートも修理も行わない」と付け加えた。

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