証券口座乗っ取りにメス 不正取引で「相場操縦」容疑 2人逮捕

証券口座が乗っ取られ、株を勝手に売買された問題で、ついに捜査のメスが入った。1月以降に発覚した不正取引は9000件を超え、総額は7000億円以上に上る。広がる被害を前に、警察は口座への不正アクセスだけでなく、本丸とも言える「相場操縦」での摘発に踏み切った。 警視庁などの合同捜査本部は28日、他人の証券口座を乗っ取って株を売買し、意図的に株価をつり上げたとして、中国籍の男性2人を不正アクセス禁止法違反と金融商品取引法違反(相場操縦)の疑いで逮捕した。一連の問題で、不正取引に関与したとされる人物の逮捕は初めて。組織的な関与があるとみられ、捜査本部は解明を目指す。 逮捕されたのは、いずれも中国籍で、川崎市川崎区の会社経営、林欣海(38)と東京都江東区の職業不詳、江榕(42)の両容疑者。 逮捕容疑は、仲間と共謀して3月17日、証券会社の顧客男女10人が持つ10口座へ不正にアクセス。これらの口座と、林容疑者が経営する法人名義の口座を使って、東証スタンダードに上場している1企業の株への大量の買い注文を出したり、買い付けをしたりして、不正に株価を84円から110円に3割つり上げ、70万株を売り抜けたとしている。 捜査関係者によると、今回、株が買われていた企業は、両容疑者と関連はないとみられる。一連の不正取引で、法人口座には、買い付け額の10%に当たる860万円の売却益が生じたという。 両容疑者は、不正アクセスにより口座を乗っ取った後、勝手に、名義人が所有する有価証券を売ったり、口座にひも付いた銀行口座から入金したりして、株を買い付ける資金にしたとみられる。 株を売り抜ける際は、買い付けた株を持つ法人名義の口座と、乗っ取った口座との間で、同じ価格で売りと買いの注文を同時に出す「なれ合い売買」をしていたとみられる。被害口座には買い付けた大量の株が残るが、その後は値が下がり、名義人には多額の損失が生じることになる。 こうした損失に対し、大手証券各社は、数十億円規模の被害補償やセキュリティー強化に乗り出している。不正取引のピークだった4~5月以降、被害は減少傾向にあるが、10月は前月より増加している。【菅野蘭】

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