「お母さんは許してくれる」暴力をふるう息子は親に甘え続け…「共依存」の連鎖をほどく元受刑者女性の思い

10年前に「万引き依存症」の診断を受けた元受刑者の女性が、薬物依存症や受刑者の家族らの相談に乗り、支援する活動を続けている。相談者の大半が解決を願う一方で、薬物や加害行為を繰り返す家族を「支えて」しまい、当事者の甘えにつながっている。彼女が向き合うのは、その「負の連鎖」をいかに断ち切り、更生につなげるかのリアルだ。 * * * ■息子から暴力、何度も警察沙汰に 「相談者の大半が、『共依存』に陥っています。自分の対処が正しいのだと頑張ってきたけど、効果が出ていないことに気が付いて、このままでいいのかと不安を感じて、相談に来られます」 そう話すのは、薬物などの依存症や受刑者の家族らの相談を受けている一般社団法人「碧の森」代表理事の湯浅静香さん(46)。 共依存とは、依存症などの当事者を家族など周囲の近しい人間が支えることで、「この人には私しかいない」などと自分の存在意義を見出してしまい、離れられなくなってしまうことを指す。 例えば――。 「息子から長年、暴力を受け続けてきた」と相談にやってきた50代の女性。話をよく聞くと、息子は20代で、問題行動が多く仕事を転々としていた。何度も警察沙汰になったが、被害届は出さずに一緒に過ごし続けてきたのだという。 ■息子を支えるのは「自分たちしかいない」 ついには耐えきれなくなり、被害届を出して息子は逮捕された。だが、執行猶予判決を受け、拘置所を出た息子をまた家に受け入れた。 そして、執行猶予期間中に女性に暴力をふるい、また逮捕。それでも女性は、被害届を取りさげるか、迷っていた。 湯浅さんは、拘置所にその息子に面会に行った。 「あまりにも楽観的な態度でした。お母さんは許してくれる、被害届を取り下げると勝手に決めていて、拘置所を出た後のことばかり考えているんです。『あなた、刑務所に入るんだからね』とはっきり伝えても、『そんなはずないよ』と返してくるんです」 息子を支えるのは「自分たちしかいない」と思う親に、当然のように甘える息子。その家族に存在するのが、「共依存」という負の連鎖だ。 被害届の取り下げをあきらめてもらい、息子は刑務所に入った。だが、刑務所から母に届いた手紙には、母が許してくれる前提での甘えた要求ばかりが書かれていた。

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