借り手“ほぼなし” 「発展させる気ない」トケマッチの異常な仕組み

腕時計を預かって預託料を支払うサービス「トケマッチ」は、シェアリングエコノミーと呼ばれる事業モデルの一つだった。所有者が使っていない資産を誰かに預け、借り手が対価を払う。「シェアエコ」と呼ばれて近年、官民で普及が進められてきた。 だがトケマッチについて、捜査幹部は「事業を発展させる意図があったと思えない」と指摘する。 トケマッチは2021年1月のサービス開始以降、腕時計を預ける人を盛んに募った。借り手が付かなくても預託料を払う仕組みを掲げ、テレビCMを流して実績を強調した。一方で、警視庁によると、借り手を募る広告はほぼなく、実際に借りる人は「ほとんどいなかった」という。 そのため、運営会社「ネオリバース」(大阪市中央区)の元代表、小湊(本名・福原)敬済(たかずみ)容疑者(44)らは集めたオメガやウブロの腕時計の多くを売却し、その金を預託料の支払いに充てていたとされる。当初から成立し得ないビジネスモデルだった可能性が高い。 トケマッチは事業停止直前の23年11、12月、最大5万円のギフト券を贈呈してまで、預託者を集め続けた。捜査関係者によると、小湊容疑者はその裏で社内に「じきに事業はやめる」と伝えていたという。 一方、腕時計の評価額に対して年10~20%という高利回りに人は集まった。利用者の多くは、収集家ではなく副業や資産運用を目的にし、被害に遭ったとみられる。【長屋美乃里】

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