公共性の強い生命保険会社で、多くの社員が不正行為に手を染めていた。業界の信頼を揺るがしかねない深刻な事態である。経営の抜本的な見直しが必要だ。 外資系生保大手のプルデンシャル生命保険は、営業担当の社員や元社員ら約100人が顧客から金銭をだまし取ったり、借りたまま返さなかったりしていたと発表した。 架空の金融商品や投資話を持ちかけ、1991年から2025年にかけて約500人から計31億4千万円を受け取っていた。そのうち23億円は弁済していない。グループ会社のジブラルタ生命保険でも同様の不正があった。 社内規定で取り扱いが認められていない投資商品や取扱業者を紹介した事例も確認されている。240人が紹介された取扱業者らに計13億1千万円を支払った。 熊本や福岡の支社に在籍していた元社員による不正もあり、九州でも被害者がいるとみられる。 プルデンシャルは専門家で構成する第三者委員会で原因を究明している。社員が在職中の行為は全額補償し、退職後の事案でも第三者委が必要と判断すれば支払う。顧客には丁寧に対応すべきだ。 これほどの長期にわたり、多くの社員が不正を働いたのはなぜか。会社側の説明によれば、営業社員の報酬制度と管理体制の甘さが不正の温床になった可能性がある。 営業社員は完全歩合制に近い雇用契約で、年収1億円超もいれば、最低賃金並みもいた。現場の裁量が大きく、会社は営業活動を十分に把握していなかった。 もっとも歩合制は他の生保会社でも採用されている。雇用契約よりも、不正を許す企業体質が問題ではないか。 プルデンシャルは社長が引責辞任した。新規契約の販売を2月上旬から90日間自粛して、営業体制の見直しや企業統治の改革を進めている。 対応は後手に回ったと言える。不正行為の社内調査は24年8月に始めた。元社員が6月に詐欺容疑で逮捕され、他の社員にも疑わしい事案が報告されたからだった。 調査結果を発表したのは今年1月で、記者会見して補償方針を説明したのはさらに1週間後である。今後も詳細な説明を続けないと顧客の不安は解消しない。 暮らしの備えに多額の保険料を預かる生保会社は信頼が何より大切だ。それなのに不祥事が絶えない。ソニー生命保険では元社員が顧客ら約100人から計22億円を借り入れ、12億円を返済していないことが明らかになった。 生保業界で法令順守や顧客本位の営業を徹底しているとはいえ、まだ不十分である。改めて問題点を洗い出し、業界全体で信頼回復を急がなければならない。 金融庁の役割も重要だ。プルデンシャルを立ち入り検査している。厳正な処分と監督の強化を求めたい。