5月10日、午後6時半ごろ、東京・世田谷区の路上で不審車両として手配されていた軽トラックをパトカーが発見し追跡した。 軽トラックは路地に逃げ込み一度は停止。警察官が下りて近づいたところ、軽トラックが突然バックし、パトカーに衝突してきた。そこで警察官は軽トラックの荷台に飛び乗るも、軽トラックは再び急発進して逃走しようとしたという。荷台の警察官は危険と判断。拳銃を1発、運転席に向け発砲した。弾は運転席の天井に当たったとみられ、けが人はいなかった。 公務執行妨害の疑いで逮捕されたのは、軽トラックを運転していた小林悠斗容疑者(20)。同乗していた17歳の少年も逮捕されたが、その後、釈放された。 今後、拳銃の使用が適切だったかも含めて詳しい経緯を調べる方針だ。警察官による発砲は、常に使用の正当性が問われる。 「今回の発砲は適正なものだと思う」そう語るのは、元徳島県警捜査1課警部・秋山博康氏 。 「口頭とか警棒で『止まりなさい』と言っても止まらなかった。やむを得ず荷台に乗るしかなかった。これは『止まれ』という警告。パトカーに衝突する、逃げる。公務執行妨害罪で逮捕するための発砲なので適正だと思う」 (秋山氏、以下同) 警察官が拳銃などの武器を使う条件は「警察官職務執行法 第7条」で定められている。それによると、「逮捕もしくは逃走の防止」「自分や他人への防護、または公務執行に対する抵抗の抑止に必要という相当な理由がある場合」に拳銃などの武器を使うことができる。 しかし秋山氏自身、刑事人生42年間でただの1発も、拳銃を撃ったことがないという。 「拳銃は人を殺害する凶器だと認識している。警察官は拳銃を使用できる条件、基準が整った、撃ってもいい状態でも消極的になる。警視庁捜査1課の特殊班に1年間出向していた時に初めて拳銃を抜いて構えたことがある」 その時、秋山氏が対峙していたのは、都内で二人を殺害し、ビルの1室に立てこもった犯人。突入の直前、上司から、こんな言葉があったという 。 「突入する時に1課長が『警職法第7条を許可する』と。それぐらい警察には個人の負担がある」 それでも引き金は引かなかった。 日本の警察官にとって、拳銃の引き金は一生に一度、抜くか、抜かないか。法的にも、倫理的にも極めて高いハードルが設けられている。 (『ABEMA的ニュースショー』より)