袴田さん、真の自由に ひで子さん「苦労すっ飛んだ」【袴田さん無罪確定へ】

現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人が殺害された事件で死刑とされてきた袴田巌さん(88)の再審無罪判決について、検察当局が8日、控訴を断念した。無実を疑うことなく支え続けてきた姉ひで子さん(91)は「これで一件落着。58年の苦労がすっ飛んだ。喜びしかない」と真の自由を手にし、重過ぎた肩の荷を下ろした。一方、弁護団は安堵(あんど)感を示しながらも、判決内容に正面から向き合ったとは思えない検事総長談話を批判。「検察内部での検証は期待できず、外部の目を入れるべきだ」と語気を強めた。 8日午後6時半過ぎ、静岡市葵区の県弁護士会館に鮮やかな黄緑色のジャケット姿で現れた姉ひで子さんは、待ち構えた弁護士一人一人と握手を交わした。記者会見では「一件落着」という言葉を二度使い、「もう誰にも何も言われない。巌が死刑囚でなくなることが、とてもうれしゅうございます」と破顔一笑した。 振り返れば58年の道のりは「長い」と思うが、特別に意識はしてこなかった。弟には少しずつ「完全に無罪になったことを分からせたい」。これからの生活については「巌も88歳だが、せめて長生きしてもらいたい。もう10年ぐらいは生かしていただきたい。ごくごく平凡に静かに暮らしていきたい」と願いを込めた。 裁判はようやく終わりを迎えたが、ひで子さんの活動は続きそうだ。「再審法の改正に向け、今後も大いに協力する」と宣言した。 今年1月に急逝した西嶋勝彦団長から主任弁護人を引き継いだ小川秀世事務局長は、ひで子さんが隣で喜びを語るのを目にして「私もうれしい」と口にした。ただ、すぐに検事総長の談話を引き合いに出し「まだ有罪立証ができるかのようなことを言っていて納得ができない。全く反省する姿勢がない」と切り捨てた。 間光洋弁護士も「非人道的な取り調べについて全然触れておらず、自白調書の捏造(ねつぞう)も有罪立証の選択が間違っていたことも受け入れていない。何を検証、反省するのだろうか」と疑問を投げかけた。

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