(ICC・国際刑事裁判所 赤根 智子 所長) 「ICCは決して負けません。正義は常にこれと対極にあるものに優越する。いや、優越しなければならない」 アメリカ・トランプ政権によって制裁対象に指定されているICC=国際刑事裁判所の赤根智子所長が、28日、オランダからリモートで記者会見し、アメリカの圧力には屈しない決意を示すとともに「法の支配」の重要性を訴えました。 (ICC・国際刑事裁判所 赤根 智子 所長) 「ICCに対する制裁は、単にICCのみの問題ではなく、 まさに法の支配の危機として捉えていただきたい」 トランプ政権は、ICCが、アフガニスタンで戦闘に加わったアメリカ兵の戦争犯罪の捜査を認めた事や、イスラエルのネタニヤフ首相に戦争犯罪の容疑で逮捕状を出した事に反発していて、ICCの解体を求めています。 18日、ルビオ国務長官は「ICCは腐敗し、致命的に政治化されている…悪意を持って権限を乱用している」などと批判し、ICC赤根所長らを制裁対象に指定すると発表。 一方、すぐにICCは声明を出し、「司法関係者が法を適用することで脅かされる場合、危険にさらされるのは国際法秩序そのものだ」と反発しました。 20日にはICCが本部を置くオランダのベーレンドセン外相が、赤根智子所長と会談し、その後、SNSに「オランダはICCを断固支持する」と表明。赤根氏の指導力を称賛するとも述べました。 また、EUのフォンデアライエン委員長も、「私はICCや赤根所長らと連帯する」と表明しました。このほか国連のグテーレス事務総長が「深い懸念」を示したほか、国連人権高等弁務官事務所も制裁の撤回を求めました。 さらに、日本にあるフランス大使館も日本語で、「あらゆる形態の脅迫や強制措置を非難する」とのメッセージをSNSに投稿するなどICCと赤根氏らへの支持表明が相次ぎました。 一方で、高市首相は、直後「大変残念に思っている」などと述べるにとどまり、超党派の議員連盟は明確な抗議と即時撤回を要求するよう政府に訴えていました。 (自民党 中谷 元 議員) 「今求められているのは、法の支配に対する日本の意思と意識でありまして、政府には、残念ではなくて抗議、断固支持という言葉の表明を求めて、本制裁の明確な抗議と即時撤回を求めるわけでございます」 こうした中、25日、高市首相は、トランプ政権に対し、今後、「必要な働きかけを行っていく」と述べました。 ( 高市首相) 「私たちは、邦人保護という意味では赤根所長を守らなければなりませんし、ICCの最大の資金拠出国として、大切な組織を守っていかなければなりませんので、さらに何らかの措置がなされるのかどうかも含めて、しっかりと注視しながら、必要なタイミングで必要な働き掛けを行ってまいります」 一方で、直後の対応が一部から「弱腰だ」などと批判されていることについて問われると…。 ( 高市首相) 「弱腰とのご批判は当たらないと思っております…赤根所長とはですね、政府として緊密に意思疎通を行い、また、必要な支援を行ってまいりました。それだけに大変残念だと私は申し上げたわけでございます…例えば米国に対しましては、赤根所長を制裁対象にしないよう累次にわたってさまざまなレベルでギリギリまで働きかけを続けてまいりました」 こう述べましたが、撤回要求については踏み込ませんでした。 政府関係者からは「日米同盟の重要性がある。国益に資する形で、対応するしかない」という声や、自民党議員からは「アメリカがトランプが怖いんだよ」という声もあがっています。 26日の会見で、赤根所長は日本政府に対し、ICCを守る姿勢を示したことに感謝を述べる一方、「ICCと世界における『法の支配』を守り抜くため最大限の努力をしてほしい」と求めました。 (ICC・国際刑事裁判所 赤根 智子 所長) 「世界における法の支配の危機は、世界だけではすまないかもわからない。日本の国内にも次第にそうした空気、つまり『力による正義の方が手っ取り早くて良いのだから強い国に従っていれば良い』という方向に行かないか…世界の法の支配というのは、市民から遠いものではないと私は思っています」 (スタジオ解説) (徳増 ないる アナウンサー) このICC国際刑事裁判所は、戦争犯罪や人道に対する罪で個人を訴追できる刑事裁判所で、「国際法の番人」といわれています。現在加盟している国と地域が125ありますが、アメリカやロシアなどはそれぞれの思惑から加盟していません。そして、このICCに日本は資金面で大きなサポートをしてきました。外務省によりますと、2025年の分担率は約14.6%に当たる約45.6億円で、最大の拠出国となっているのです。赤根所長も「日本をリーダーとして見ていると思う」などと述べています。その赤根智子所長をアメリカが制裁対象にしました。その内容は、アメリカへの入国禁止、また、クレジットカードの銀行決済などの停止などです。背景にあるのは、おととし2024年にガザへの侵攻を巡って、ICCがイスラエルのネタニアフ首相に逮捕状を出したことにあります。アメリカのトランプ政権としては、いわば仲間であるネタニアフ氏に逮捕状が出されたことなどに反発したものと見られています。こうした対応に、各国からはICCや赤根所長への支持の表明が相次いでいます。一方で、高市首相はといいますと、「大変残念」と述べ、アメリカの制裁について「日本の立場と相いれるものではなく、大変深刻に受け止めている」と述べました。「法の支配」を外交の柱として掲げてきた日本ですが…青山さん、これまでのアメリカの対応や日本政府の対応、どうご覧になりますか? (コメンテーター 政治ジャーナリスト 青山 和弘 氏) 日本政府は、「力の支配」に対抗するには「法の支配」しかないわけですね。核兵器を持たず専守防衛を掲げる日本にとって、この「法の支配」というのは生命線なんです。そういうことで、国際刑事裁判所の設立にも深くかかわり、最大の資金拠出国なんです。ところが赤根所長に対する制裁に「残念だ」という反応。高市首相は弱腰批判は当たらないと主張していますが抗議の意思を示していないのは確かです。トランプ大統領と摩擦を起こしたくないのは分かりますが、私は高市さんが目指していた「強い日本」とか、「誇りある日本」というのは、こういう国なのかなと率直に思いますね。強い力を持った国…アメリカにしても中国にしてもロシアにしてもこういう国が横暴なことをやってきた時に、「まあ、しょうがないね」みたいな対応をしていたら、日本はそういう国の言うことを聞いていくしかない。だから、「法の支配」が大事だと、高市さんも事あることに主張していたじゃないですか。例えば高市さんがよく言っている「自由で開かれたインド太平洋」というのは、インド太平洋が法の支配、ルールに基づいた各国に開かれた海になることで、地域全体の平和と繁栄を目指すという理想じゃないですか。今回の件で高市さんはトランプさんと電話会談をして日本の立場をちゃんと説明したんですか?この辺りも消極的だと言われても仕方がない。高市さんの外交姿勢が問われる問題だと私は思います。 (徳増 ないる アナウンサー) 津川さん。 (レギュラーコメンテーター 津川 祥吾 氏) 問題点としては、このICC自身にも問題点、課題を指摘する声もあります。特にアメリカ側がずっと言っているのは、ICCに参加していない国の政府関係者を訴追するというのは、これはおかしいんじゃないかと。これはICC側には別に言い分があるんですけど、アメリカはずっとここを指摘しているのはその通りですし、これは日本とも見解が違いますが、ただ、第一次トランプ政権の時もですね、やっぱりICCの関係者をアメリカは個人的に経済制裁しているんですけれども、ICCに問題があるからといって、その個人に対して経済制裁をする理由にはならないと思いますし、トランプさんの後のバイデンさんの時に、アメリカは自らそれは「不適切だった」、「効果がない」といって取り下げているんですね。だから、そこの個人に対する経済制裁をかけるというのは間違いだというのは、 これは日本政府としてはっきり言うべきだと思いますね。 (徳増 ないる アナウンサー) 今後、日本政府はどのように対応していくのでしょうか。注目です。