「餃子の王将」を展開する王将フードサービスの社長だった大東隆行さん=当時(72)=が平成25年12月に射殺された事件で、殺人罪などで起訴された特定危険指定暴力団工藤会系組幹部、田中幸雄被告(59)の判決公判が16日、京都地裁で開かれる。検察側は無期懲役を求刑するが、被告側は全面無罪を主張している。被告と犯行を結びつける直接証拠はなく、間接証拠の積み重ねで被告が実行犯だと認められるかが争点だ。これまでの公判では、捜査に携わった警察官ら30人以上が証人として出廷した。現場付近で見つかり、被告と同じDNA型が検出されたたばこの吸い殻などの間接証拠を中心に審理された。検察側は吸い殻の形状から被告が大東さんを待ち伏せした際に吸い、ぬれた地面にたたきつけ火を消したと主張した。弁護側は、現場でたばこを吸った際に出る灰が見つかっておらず、被告の吸い殻を第三者が入手し現場に残した可能性を指摘した。事件では、現場近くで発見されたオートバイから銃の発射で生じる成分「射撃残渣(ざんさ)」が検出され、タイヤの接地面の溝も現場付近のタイヤ痕とほぼ一致した。このオートバイは事件の約2カ月前に盗まれ、その周辺では同時期にミニバイクも盗まれていた。検察側はミニバイクの盗難現場で防犯カメラに軽乗用車が写っており、被告が当時、幼なじみから借りていたものだと強調した。弁護側は映像では軽乗用車の装備品などの詳細までは確認できず、幼なじみの車とはいえないと反論した。事件前日には、大東さん宅近くで防犯カメラにフルフェースヘルメットをかぶって傘を差す人物が写っていた。検察側は身長や体格が被告と矛盾せず、歩き方の特徴が似ていたと主張した。一方、弁護側は歩き方の鑑定は科学的な原理が確立しておらず、被告と特定することはできないとした。裁判官のみで審理された今回の公判について専門家はどうみるか。元検察官の亀井正貴弁護士は「たばこの吸い殻や盗難バイクなどに関する証拠は間接事実を証明するものに過ぎず有罪立証のハードルは高い」と指摘した。その上で「被害者は拳銃で急所を撃たれており、素人の犯行ではない。裁判官が心証形成の過程で、過去の事件で工藤会のヒットマンと認定された被告を、今回の事件の実行犯と推認するかどうかが焦点だ」とした。