余美霞BBC中国語版記者(香港)、ケリー・アン記者香港の民主活動家、黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏が香港国家安全維持法(国安法)違反の罪に問われた裁判で、香港の裁判所は5日、黄氏が外国勢力と結託したとして、拘禁10年の判決を言い渡した。国安法は、中国政府の支配拡大に対抗する民主化運動が激化した事態を受けて、2020年に施行された。黄氏のほか、香港の数百人の活動家や一般市民が、同法に基づき逮捕されている。国安法を批判する人たちは、幅広く適用される同法が反対意見を封じ込めたとしている。他方、当局は安定を維持するために必要な法律だと主張し、香港の大切な自治を同法が弱体化させたという見方を否定している。黄氏はすでに過去6年、刑務所に収監されてきた。来年1月に釈放される予定だったが、今後さらに10年間、刑務所で過ごすことになる。先月30歳になった黄氏は、10代で始めた社会活動のため、これまでも繰り返し投獄されている。5日には、濃紺の長袖シャツ、カーキ色のズボン、黒縁メガネを身に着けて法廷に現れた。以前の公の場に姿を見せた時と比べて、やせているように見えた。満員の傍聴席の人々にあいさつするようにうなずき、裁判官が判決理由を読み上げる間、時折メモを取っていた。裁判所の外には大勢が集まり、数十人の香港市民が傍聴席を確保しようと何時間も行列した。警察官も多数配置されていた。黄氏は既に国家転覆罪で服役中で、来年初めに釈放される予定だったが、9月上旬に新しい罪状で起訴され、有罪を認めた。5日の法廷で裁判官は、10年の刑期のうち2カ月と2日間は、現在服役中の刑期と併合して執行されると述べた。検察側は、黄氏が、中国国外に逃れている民主活動家の羅冠聰(ネイサン・ロー)氏らと共謀し、2020年7月から11月下旬にかけて、香港や中国への制裁や封鎖を外国の組織や人物に求めたと主張した。黄氏と羅氏は複数の仲間と共に、2016年4月に民主派政党「香港衆志(デモシスト)」を立ち上げ、同年の香港立法会選挙に立候補した。「デモシスト」はすでに解散している。香港の李家超(ジョン・リー)特別行政区行政長官は5日、黄氏と羅氏が「香港の繁栄と安定を損なう主要な犯人たち」に含まれると述べた。判決後に発表された声明の中で、李氏は「彼らの行為は国家主権、安全保障、発展の利益を著しく損なっただけでなく、一般市民の福祉と社会の安定を直接的に損なった」と述べた。黄氏の友人で民主活動家のフランシス・ホイ氏は、この判決に「心が張り裂けそう」で「憤慨している」と述べている。現在アメリカに住むホイ氏は、「今日の判決はジョシュアだけの問題ではない。香港の歴史の一章を書き換え、自分たちの街の未来を形作ることができると信じていた世代全体の貢献を消し去ろうとする、幅広い政治的弾圧の一環だ」とBBCに話した。人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは、この判決を「残酷で不当」だと評した。「香港社会を抑え込み、国際的に非難される可能性を減らすため、香港政府は影響力のある民主派指導者に対して、罪状を積み上げるという戦術を採用したようだ」と、アジア担当ディレクターのエレイン・ピアソン氏は述べた。批判の多い国安法の下でこれまでに下された最も重い判決は、元メディア王のジミー・ライ氏に対するもので、外国勢力と結託した罪で禁錮20年の刑を言い渡された。■黄之鋒氏とは黄氏は1996年10月、IT専門家の父と主婦の母の間に生まれた。幼い頃に失読症と診断され、学校生活に苦労した。一方、既存のルールや規範が理にかなっていないと感じたときは、進んで異を唱えた。中学校時代には、学食の昼食代が高すぎると抗議するため、フェイスブックで同級生たちとデモを行った。2011年に当時14歳の黄氏は、民主化運動を支持する学生運動団体「学民思潮」を共同で立ち上げた。同団体は急速に規模と影響力を拡大した。翌年、同団体は10万人以上を集め、学校で義務的な「愛国教育」を実施しようとする香港政府の計画に抗議し、計画の撤回を迫った。2014年になると、「雨傘運動」として知られた市民的不服従運動の最前線にいた黄氏は、香港の民主化運動でも特に有名な一人となっていた。2016年には羅氏や現在亡命中の活動家の周庭(アグネス・チョウ)氏と共に、「デモシスト」を共同設立した。しかし、黄氏は「抗議活動のリーダー」というレッテルを貼られることに、しばしば不快感を示した。「この運動には多くのファシリテーターがいて、私もその一人だ。トップダウンの指揮系統ではなく、今ではボトムアップの指揮系統がある」と、2019年11月に英紙フィナンシャル・タイムズに話していた。デモシストは、中国政府が国安法を導入した2020年に解散した。羅氏はイギリスへ渡り、海外で活動を続けた。黄氏は香港にとどまり、立法会議員選挙に立候補しようとしたが、当局は国安法に反対したことを理由の一つとして、立候補を阻止した。他方、黄氏への訴訟は次々と積み重なっていった。2020年11月23日には、2019年に香港警察本部前で行われた抗議活動への関与をめぐる複数の罪状について有罪を認めた。その後、国安法に基づき起訴されるようになった。2021年2月に「国家転覆を企てた」として47人が起訴されると、服役中の黄氏もそこに含まれた。国安法に基づく起訴としては最大規模で、この47人は「香港47人」として知られるようになった。黄氏は2024年に国家政権転覆共謀罪で禁錮4年8カ月を言い渡され、服役中の昨年、国安法により外国との結託の罪で起訴された。抗議活動への関与をめぐり有罪を認めた前日の2020年11月22日には、ウォン氏はインスタグラムに「香港の人々」にあてたインスタグラムへの投稿で次のように書いた。「正直言って、これまで香港の政治は大して信頼してこなかったけれども、香港の人々には全幅の信頼を置いている」「政治権力は今、市民社会の回復力に対して、徹底した挑戦を突きつけているが、香港の人々はこれまでと同様に、必ず困難を乗り越える方法を見つけると信じている」(追加取材:マーティン・イップ)(英語記事 Joshua Wong, face of Hong Kong's pro-democracy protests, jailed for 10 years)