東京女子医科大学の元理事長、岩本絹子容疑者が、新校舎建築工事をめぐる背任事件で逮捕された。岩本容疑者は金権体質、独裁ぶりなどから「女帝」「東京女子医大のプーチン」などと呼ばれ、家宅捜索では関係先から現金約1億5000万円や金塊2キロなどが押収され、連日メディアを騒がせている。 大学病院に詳しいフリーランス麻酔科医の筒井冨美医師は、「昭和時代の白い巨塔の時代でしたら、教授とか院長が多少傲慢なことを言っても下は黙って従っていたんですけど、いまはインターネット時代で転職とかが簡単になった。元理事長は78歳ということで、まだ脳みそが財前教授のままだったのかな」と語った。 東京女子医大は1900年、日本で初の女性のための医学校として創立。1951年、日本で初めて心臓手術を成功したことで知られ、元フジテレビアナウンサーの逸見政孝さんや巨人の長嶋茂雄終身名誉監督ら著名人も入院するなど、その名はたびたびマスコミにも登場した。 しかし2001年に、心臓外科手術の医療ミスにより12歳の女の子が死亡。2014年には男の子に対し過量の麻酔薬プロポフォールを投与し、急性循環不全で死亡した。過去にも同様の事故で12人の子どもが死亡していることも判明。この事故により、東京女子医大は「特定機能病院」の承認を取り消されている。 特定機能病院とは、診療報酬の優遇措置を受けられるほか、難病患者の保険診療の一部が公費扱いとなるなど、さまざまな優遇措置がとられる病院のこと。「特定機能病院」の指定を受けることは、潤沢な施設を有し、それに見合った医師が集っていることの証でもある。 筒井氏は「特定病院というのを取り消されたってことは、やはり経営的にも収益が下がってしまう。看板というかイメージとしても、特定機能病院ということで『この病院はすごいぞ』みたいな宣伝効果もあったが、それがなくなってしまうのはイメージダウンにもなる」と説明した。 そんな傾きかけた経営の再建を託され、岩本容疑者は2014年に副理事長に就任。赤字経営となっていた大学病院は改革によって一転黒字化。その成果もあり2019年に理事長に就任し、名実ともに東京女子医大のトップに上りつめた。 しかし岩本容疑者の経営改革こそが問題だったとの声もある。「医者としての勤務歴もそう長いわけじゃないし、論文も検索したところ英語のちゃんとした国際雑誌に出たのはほとんどない。かといって経営コンサルとしてらつ腕を振るったとか、そういう実績もない。微妙な人をトップに据えちゃったかなという印象」(筒井氏) 岩本容疑者が行ったのは、徹底したコストカットとリストラだったという。筒井氏は「『コストカットだ』と言って、本人も自転車に乗ってボロい理事長室にいるんだったらまだ耐えられたかもしれないが、給料だけ減らして自分は贅沢をするんじゃ、それって経営でもなんでもない。サクッと辞めて次のまともな病院を探すという風に、どうしても流れてしまう」と指摘。 「結局、医者とか看護師とかが離れてしまえば病院として存続することは難しい」と、東京女子医大の行く末を憂慮した。 (『ABEMA的ニュースショー』より)