闇バイト「高額」見て応募、特殊詐欺に加担 佐賀地裁公判 女性被告、警察官なりすまし 「家族に危害の恐れ」

交流サイト(SNS)を通じて犯罪の実行役を募る闇バイトの問題が深刻化する中、応募して特殊詐欺事件に加担させられた20代の女性被告の公判が佐賀地裁で1月まで行われた。警察官になりすまして高齢者からキャッシュカードをだまし取る犯罪に手を染めた経緯や、恐怖を覚えて依頼を断れなくなる実態が明らかになった。 被告は、幼い子どもを育てるひとり親。借金を抱えて家計が苦しい中、SNSで目にした「高額バイト」に申し込んだ。昨夏、言われた通りに福岡県小郡市へ向かい、途中で指示を受けた。「警察官になりすまして」。応募の時と話が違ったが、「個人情報や母親の電話番号まで伝えていたので、断るとどうなるか分からない」。引き返すことはできなかった。 同市の80代男性の自宅を訪問し、イヤホンから聞こえる男の声に従って女性警察官のふりをしながら男性と話をした。キャッシュカードを受け取って暗証番号を聞き出した後、その口座から現金を引き出した。男からは「金を盗んだり飛んだり(逃げたり)すると危害を加える」と脅された。 その後、再び依頼があった。何かしらの理由を付けて先延ばしにしようとしたが、しつこく連絡が続いた。断り切れずに「次でやめよう」と思い、同様の手口で佐賀市の80代女性からカードを受け取った。それから間もなく逮捕された。報酬として8万円ずつ受け取っていた。 法廷で被告は、相談しなかった理由について「悪いことをしている気持ちと、家族に危害が加えられる不安があった」と吐露した。被害者に対して「怖い思いをさせた」と何度も謝罪の言葉を口にした。 裁判官は判決で、被告が生活に困窮していた事情を考慮しつつ、闇バイトに関わったのは「安易と言わざるを得ない」と非難した。事件の中で実行犯として「重要な役割を担った」との判断も示した。指示した共犯者は摘発されずに「氏名不詳」のまま、有罪判決が言い渡された。

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