「逮捕状が出ている」と脅してお金を要求する“逮捕状”詐欺。 最近、耳にする機会も増えているかと思いますが、高齢者の被害が多い…と思いきや、今、50代以下の被害者が急増しています。 被害者の約7割が50代以下、1年で被害額が約430倍にもなったこの詐欺について、「イット!」は、2人の男性を取材。 “この世代ならでは”の、ある共通の心理が働いていました。 2月4日、東京都内の自営業・50代の加藤さん(仮名)にかかってきた実際の電話。 突然、警察をかたる人物から名指しで「加藤さんですよね」と電話があり、「詐欺事件に口座が使われていて、あなたにも逮捕状が出ている」と説明を受けます。 そして、制服を着た警察官からLINEのビデオ通話で事情聴取をされることに。 警察をかたる人物: 愛知県本部捜査二課の青木が、電話で録音調書を作成していきます。 「金の流れを見るために口座を把握したい」という警察官。 警察をかたる人物: 加藤さんの名義で開設している銀行の口座っておいくつありますか? 加藤さん(仮名): 1、2…3…4つですかね。 警察をかたる人物: 続いて金融リストを作成します。 加藤さん(仮名): 何リストですか? 警察をかたる人物: 金融リストです。この事件に関与する全ての被疑者に対し、金融リストを登録する必要があります。銀行名から教えていただけますか? 犯罪に関わっていないことを証明するために口座を明らかにするよう求められた加藤さんは、全ての銀行名と残高を伝えてしまいます。 すると、そのお金を金融庁の指定口座に振り込むよう促されたのです。 警察をかたる人物: 金融庁指定口座の方に送金し、資金の調査ですね。30分〜1時間くらいで調査の方は終わって、違法性がないと判断されれば、当然当事者の口座にお金は戻され、再び使えるようになります。そちらは自身で送金の作業を行う必要があります。 加藤さん(仮名): 送金!?ちょっと待ってください、これ今私が振り込めってことですか? 「送金」という言葉でこれは詐欺だと気づき、警察に連絡して被害を免れました。 加藤さん(仮名): 親とかに(詐欺に)気をつけようねって話をしていた立場だったにもかかわらず、悔しいですね。 その加藤さんが自身の個人情報を聞かれるがままに答えてしまった背景には、ある心理が働いていたといいます。 加藤さん(仮名): むしろ潔白を晴らしてやるっていう、戦闘モードに入ってました。(逮捕されたらという怖さより)戦って正義を勝ち取ってやるって感じですかね。 「調べてもらえれば身の潔白は晴れる」。 1月、同様の手口の詐欺に遭いかけた30代の田中さん(仮名)も、同じことを口にしていました。 田中さん(仮名): 聞いてるうちに、ホントかな?みたいなのもありまして、もしも本当であったとしても、調べたらすぐ分かるから、別にどうってことないかなみたいな気持ちもあって。 こうした心理は50代以下に多くみられ、「逆に犯罪者に利用されている」と犯罪ジャーナリストの多田文明さんは言います。 犯罪ジャーナリスト・多田文明氏: 自分はぬれぎぬだと思っている。そうすると一生懸命弁解しようとする。ところが、電話をかけてきているのは詐欺グループ。いかに自分の手中に相手を入れてお金の話をさせるかと。(お金の話を引き出すことが)一番彼らがやろうとしているポイント。無実を証明しようとすればするほど、相手の魔の手にはまっていく。 「潔白を晴らしたいという」心理を突いてくるわけですが、本当に巧妙なのが、先ほどの加藤さん(仮名)にもかかってきた電話番号の末尾「0110」。 これは本当に警察署で使用されている末尾の番号で、若い世代はそれをインターネットで調べると「警察だ」と逆に思って、信じ込んで応対してしまうということなんです。 ただ、よく見ると番号の頭は「+88」で、国際電話。 海外の回線を利用した偽造番号を使っているというのが、今回の巧妙な手口でした。 SPキャスター パトリック・ハーラン氏: 皆さん、ぜひ覚えていただきたいんですけど、詐欺対策は深呼吸です。感情的になっていると判断能力が下がるんです。自分が恐怖を感じているとか興奮しているとか、正義感に満ちている時とかは落ち着いて、一度電話を切って友達に電話するなど、冷静な判断に頼っていただきたい。 一度電話を切って、相手が名乗った警察署に自分から折り返し電話すると、間違っている電話だと分かるということです。 宮司愛海キャスター: また、LINEなどから誘導するようなことは警察は行いませんので、そういったこともぜひ疑ってほしいと思います。