ドイツで難民による凶悪事件相次ぐ 総選挙では「極右」が躍進か

2015年の「欧州難民危機」以降、内戦中だったシリアやアフガニスタンなどからの難民を積極的に受け入れてきたドイツで、難民が刃物で襲撃したり、車を暴走させたりして多くの市民を死傷させる事件が相次いでいる。治安悪化の不安が高まる中、2月23日の連邦議会(下院)総選挙に向けて各政党は厳格な難民・移民政策を掲げており、「極右」政党の躍進も予想される。 2月13日、南部ミュンヘンで労働組合のデモ隊に車が突っ込み、母子2人が死亡し、約40人が負傷した。地元警察は、運転していたアフガン人の男性(24)を逮捕。AP通信によると、男性は難民認定申請中だった。事件が起きたのは、各国の首脳・閣僚らが参加したミュンヘン安全保障会議の開幕前日だった。 1月には南部アシャッフェンブルクで、幼稚園児らが刃物で襲われ、2人が死亡。24年12月には東部マクデブルクのクリスマスマーケットに車が突っ込み、6人が命を落とした。同8月には西部ゾーリンゲンで、イベントの来場者が刃物で襲われ、3人が死亡。同5月にも西部マンハイムで、反イスラムの集会が刃物で襲撃され、警察官1人が犠牲になった。4事件の容疑者は、アフガンやサウジアラビア、シリアからの難民の男性だった。 ショルツ政権は、難民の大規模な受け入れを進めたメルケル前政権の路線を踏襲してきた。だが、こうした凶悪事件の頻発に危機感を強め、重大犯罪を犯した難民の国外退去処分の迅速化など対策を打ち出したが、国民の不安解消には至っていない。 総選挙に向け、野党は政権の難民・移民政策への批判を強めている。世論調査では、「国境の閉鎖」を公約する「極右」政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が2割強の支持率を維持して2位につける。21年の前回総選挙での得票率10%と比べて2倍以上の人気といえ、議席を大きく増やす可能性が高い。 支持率3割でトップの野党統一会派「キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)」も、AfDに引きずられるかのように、厳格な国境管理を主張している。【福永方人】

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