【ニューデリー時事】イスラム主義組織タリバン暫定政権が支配するアフガニスタンでは、ジェンダー平等と正反対の女性抑圧が進んでいる。 教育や就労の機会を奪い、公共の場で歌ったり大声を出したりすることを禁止。女子選手のパリ五輪参加も認めなかった。理想とするイスラム国家建設のためと強弁するが、国際社会からの圧力は強まるばかりだ。 オランダ・ハーグに本部を置く国際刑事裁判所(ICC)は1月、タリバン最高指導者アクンザダ師らの逮捕状を請求したと発表した。女性や性的少数者の移動や表現の自由、教育といった基本的権利を剥奪した「人道に対する罪」の疑いがあるとしている。 「正当な法的根拠を欠き、政治的偏見と二重基準に基づくものだ」。タリバンは即座に反発した。2021年に実権を握るまで20年に及んだ米軍駐留下での戦争犯罪に、ICCが目をつぶってきたと反論。国民がようやく苦しみや混乱から解放され始めたと、抑圧を正当化した。 タリバンへの批判は「仲間」のイスラム圏からも上がっている。隣国パキスタンで今年1月に開かれたイスラム世界の女性教育推進に関する国際会議は、「女性教育は宗教的義務であるだけでなく、社会の緊急の要請だ」とする共同宣言を採択した。登壇したノーベル平和賞受賞者の女性人権活動家マララ・ユスフザイさんは、欠席したタリバンを「女性を人間と見なしていない」と糾弾した。 教育からの女性排除は、国際的な孤立を深めるだけでなく、国を支える人材育成を阻害しかねないだけに、タリバン内部にも異論がある。暫定政権のスタネクザイ外務副大臣は1月、アフガン東部ホスト州で開かれた式典で「イスラム首長国(タリバンが主張する国名)は、全ての人に教育の門戸を開くべきだ」と訴え、最高指導部を公然と批判した。 それでも、タリバンは抑圧の手を緩めていない。2月には首都カブールにある国内唯一の女性向けラジオ局「ラジオ・ベグム」を強制捜査し、一時業務停止に追い込んだ。21年、国際女性デーの3月8日に合わせて開局した同ラジオは、教育や健康といった情報発信を通じ女性を支援していた。 暫定政権は、欧米諸国などが科す在外資産凍結を含む経済制裁解除を求めている。しかし、中国やロシアが関係強化に動いているものの、人権抑圧への懸念から、正統政府と認めた国はまだない。