《ブラジル》PCCが世界28カ国に拡大=日本もコカイン販売先に

サンパウロ発の凶悪犯罪組織「州都第一コマンド(PCC)」が世界規模で勢力を拡大し、少なくとも28カ国にその活動基盤を構築、その中には日本も含まれていることが明らかとなった。麻薬や武器の密輸に加え、資金洗浄並びにテロ資金との関連性も指摘されており、恒久的な定着を狙った戦略的布石であり、国際社会にとって重大な安全保障上の脅威となっている。PCCの国際的拡大の実態について24日付G1が報じた。 サンパウロ州検察局の報告書によれば、PCCは南米を中心に四大陸に拠点を広げ、刑務所内への浸透により組織力を強化。現地住民を含む新規構成員獲得や、物流・資金面での活動拡大を進めている。 この調査はPCCの外国監視部門「州間調整班」「国際調整班」の情報を基に、通信記録の解析や外国当局との情報交換によって作成され、関連現地組織も対象に含まれている。 特筆すべきは、PCCが刑務所発祥で強固な組織と厳格な規律を持つことだ。リンコン・ガキヤ検察官は「PCCの最大の脅威は刑務所内での組織力とイデオロギーの浸透で、欧州にも深刻な影響を及ぼす」と指摘。PCCは欧州マフィアから学び、麻薬流通や資金洗浄の手法を高度化させているという。 ABC連邦大学のカミラ・ヌネス・ジアス研究員は「PCCは新進出地では単純な経済活動にとどまるが、拠点化が進めば組織拡大と現地住民の勧誘・組織化を本格化させる」と指摘した。 南米ではブラジルと国境を接するパラグアイ、ベネズエラ、ボリビア、ウルグアイが特に重要視されている。これらの国々はコカインの主要生産地かつ密輸ルートの要衝であり、特にパラグアイの刑務所内でのPCCの浸透は暴力抗争を招き、2019年には刑務所内暴動で多数の死者が出た。 欧州では言語・文化の親和性からポルトガルが最大の拠点となり、ブラジル出身者への定着と刑務所浸透が進んでいる。現地当局は麻薬摘発や資金洗浄監視を強化し、潜水艦による数トン規模のコカイン密輸も摘発された。ブラジルとスペインの合同作戦で逮捕者も出ている。イタリアではマフィア組織「ンドランゲタ」との連携が明らかになり、両国検察は恒常的な合同捜査チーム設置に向け協議中だ。 アジア地域では唯一、日本でのPCCの明確な存在が確認されている。日本はコカインの最終的な販売先として位置づけられ、密売人の定着は香港地域およびオセアニア、特にオーストラリアにおける麻薬取引を促進する可能性があると見なされている。同地域におけるコカイン1キロあたりの取引価格が15万米ドルを超えることもあるという。 セルビアやレバノンなど麻薬密輸とは関連が薄い地域でもPCCの動きが確認され、金融取引を通じた犯罪収益の洗浄が疑われている。イスラエル防衛省の情報を受け、ブラジルの金融機関は暗号資産を用いた資金移動の監視を強化し、関係当局と連携している。 こうした国際的な脅威に対し、ブラジル政府は国際刑事警察機構(インターポール)との協力協定を締結し、情報交換や合同作戦を推進。ポルトガルとの間でも犯罪組織対策に関する協定が結ばれている。 だが、国内においては州間連携不足が課題で、専門家は統一的な国家安全保障機関の設置を強く求めている。治安政策の政治的対立を超えた、国家としての一体的対応が喫緊の課題とされている。

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