尹大統領が52日ぶりに釈放、裁判所が捜査当局の違法性を批判する異例の事態、弾劾審判の判決にも影響必至

1月15日に逮捕されて以降、ソウル拘置所に収監されていた韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が52日ぶりに釈放された。大統領側が、「内乱事件」を担当するソウル中央地裁の刑事25部合議裁判部に2月4日に請求していた「拘束取り消し」が認められたのだ。 本裁判を担当している裁判部から「拘束取り消し」請求を認められたことは、これからの刑事裁判はもちろん、憲法裁判所での弾劾審判の判決にも少なからず影響を与えると思われる。 ■ 尹大統領の逮捕・起訴の手続きを巡り裁判所が公捜処の捜査権に疑問を呈す 尹大統領側の拘束取り消し請求を認めたソウル中央地裁の決定文は、公捜処(高位公職者捜査処)と検察の誤った捜査慣行や組織便宜主義的な態度を問題視した尹大統領側の主張も認めた。まず、ソウル中央地裁は拘束取り消し理由について、「検察は拘束期間が満了した状態で公訴を提起した」と指摘している。 公捜処は今年1月15日10時30分ごろ、機動隊など警察3000人を投入して漢南洞にある大統領官邸で尹大統領を逮捕した。以後、拘束状態で直接捜査を試みた公捜処だったが、尹大統領が「公捜処は内乱罪捜査権がない」という理由で頑強に捜査を拒否すると、24日起訴意見で事件を検察に投げ出した。 一方、検察は「補完捜査」を理由に24日拘束延長を申請したが、ソウル中央地裁は「検察には公捜処の捜査に対する補完捜査権がない」として棄却、25日の2回目の拘束令状申請もやはり棄却した。すると検察は26日午後6時ごろ、尹大統領を「内乱首謀容疑」で拘束起訴した。だが今回の裁判所の判断によれば、この時点ではすでに拘束が満了していた、つまり、尹大統領は「不法拘束」の状態だったという。 逮捕された時点から始まる法定拘束期間は10日間。ただし、拘束令状審査のための記録が裁判所に渡された日から検察へ戻ってくる日までの期間は拘束期間から除外される。拘束できる期間がその分だけ延長されるということだ。 これを尹大統領の拘束期間に当てはめてみると、15日に逮捕された尹大統領の拘束満了は単純にカウントすると10日後の24日午前0時となる。そこに、尹大統領に対する拘束審査にかかった、17日から19日にかけての約33時間を、拘束期間に算入しなければいけない。 ここで、検察はこの期間を「日」単位で計算して3日間(27日午前0時まで)拘束を延長できるとしたのに対し、尹大統領側は「時間」単位で計算して拘束期間を1日、あるいは33時間だけ延長すべきで、拘束期間は25日午前0時、遅くとも26日午前9時ごろは終わっていると主張したのだった。

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