剃髪、断食…尹大統領弾劾の賛否巡りデモ過熱 韓国当局、暴動を警戒

韓国の憲法裁判所が来週中にも尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の罷免の是非を判断するとみられる中、尹氏の支持派と反対派によるデモ活動が過熱している。憲法裁前では尹氏の支持者が連日、抗議の剃髪(ていはつ)や断食を敢行し、警察は道路を一部封鎖するなどして対応。激しい反発が予想される判断当日は、ソウル市内に1万2千人以上の警察官を動員する安全管理計画を検討している。 憲法裁前では13日、尹氏の支持者らが横並びの椅子に座り、バリカンで次々に丸刈りにしていった。中には女性の姿も。周囲では市民がマイクで「尹大統領の弾劾は必ず却下」「われわれが勝つぞ」などと叫び、歓声が上がった。 「断食16日目」と書かれたプレートを掲げ、座り込みを続ける市民もいた。60代の女性は、戒厳令を宣言した理由の一つに中国が韓国の選挙に不正介入した疑惑を挙げる尹氏に同調し、「尹大統領は中国の介入から国を守ろうとしたんだ」と語った。 一方、観光名所の景福宮前の道路には、尹氏の罷免を求める反対派が抗議活動のために設置したテントが百数十メートル並んでいる。釜山から訪れ、断食を続ける集団も。掲げられた看板には「尹錫悦罷免」「国の恥だ」など厳しい言葉が並ぶ。尹氏の支持者らが集まる憲法裁から約1・5キロしか離れておらず、判断当日は衝突する恐れもある。 警察が警戒するのは、判断に反発する市民が憲法裁など主要施設に乗り込む事態だ。すでに憲法裁や大統領官邸前の道路には警察車両を隙間なく並べて「車壁」をつくり、通行を制限している。当日は車壁を二重、三重に増やし、4メートル以上の高いバリケードを張ることも計画している。 憲法裁のほか、尹氏の逮捕時に反発する市民から襲撃を受けたソウル西部地裁や中央地裁、米国、中国など主要国の大使館、各政党本部などに警察を配置することを検討している。 ソウル市は判断当日にデモ集会が予想される憲法裁や大統領官邸付近に応急診療所を設置する予定。周辺の幼稚園や小中高校は臨時休校し、地下鉄の駅も閉鎖される。 首都圏以外でも警戒態勢を敷く。南部・釜山市ではデモ集会に備え、釜山駅前広場の欄干周辺をパイロンやロープで規制。判断当日は圧死防止の観点からエレベーターの利用制限も検討する。 中央日報によると、朴槿恵(パククネ)元大統領の罷免決定当時も約4600人の警察を投入したが、朴氏の支持者の一部が暴徒化して警官隊と衝突し、少なくとも4人が死亡したという。退陣を求める僧侶が焼身自殺する事件も発生した。 韓国メディアは「判断は来週行われる可能性が高い」と報じている。 (ソウル山口卓、釜山・平山成美)

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