米当局拘束の活動家、裁判所が国外追放を許可 永住許可持つコロンビア大卒業生

アナ・フェイギー、ノミア・イクバル BBCニュース 米南部ルイジアナ州にある連邦移民裁判所の判事は11日、パレスチナ支持の抗議活動に関与したとして3月に米当局に拘束された米コロンビア大学卒業生のマフムード・ハリル氏(30)について、国家安全保障への脅威として国外追放できるとの判断を示した。アメリカ永住権を持つハリル氏は、具体的な罪状で起訴されていない。 ニューヨークの自宅で逮捕されたハリル氏はその後、ルイジアナ州の拘束施設に移送された。施設内で書いた手紙でハリル氏は、自分の逮捕はパレスチナ人の権利を訴えたことに対する「直接的な結果」だと主張した。 トランプ政権は冷戦時代の移民法を引用し、ハリル氏の在留はアメリカ外交政策の利益に反すると主張した。 今回の移民裁判所の判決をもって、ハリル氏が直ちに国外追放されるわけではない。ジェイミー・コーマンス裁判官は、ハリル氏の弁護士に対し、判決への控訴を4月23日まで認めた。 ハリル氏は昨年、ニューヨークのコロンビア大学で、イスラエルによるガザ地区攻撃に反対する抗議行動で、中心的な存在となり注目された。抗議活動に参加したことを理由に国外追放すると入国管理局職員から告げられた3月8日以来、ルイジアナ州の拘置所で勾留されている。 ハリル氏は自分の逮捕は違法だと訴え、東部ニュージャージー州の連邦地裁にも提訴している。弁護団は、この裁判で勝訴すれば、ハリル氏の国外追放を阻止できるかもしれないと話している。 ■抗議参加はアメリカの国益に反すると政府 トランプ政権は、アメリカ滞在によってアメリカの外交政策に不利な結果をもたらす可能性がある人物について、国外追放権限を政府に与えた1952年の法律を根拠に、法廷で争った。 移民裁判所のコーマンス 判事は、ハリル氏がアメリカにとって「外交政策上の悪影響」をもたらすという主張は「表面上は合理的」だとして、トランプ政権がハリル氏の国外追放を進めることは容認されると判断を示した。 審理の間は黙っていたハリル氏はこの判決後、 「前回のあなたの発言を引用したい。前回あなたな、適正手続きを受ける権利と、根本的な公平性ほど、この法廷にとって重要なものはないと言った」と判事に向かって述べた。 「このどちらの原則も、今日も、これまでの審理全体を通じても見当たらなかった。そのことが今日、はっきりした」、「だからこそトランプ政権は私を、家族から1000マイルも離れたこの裁判所へ送致した」のだと、ハリル氏は批判した。 アメリカ自由人権協会(ACLU)はこの決定について、「あらかじめ決まっていた」ものだと主張。今回の判決はトランプ政権が「ハリル氏に関する『証拠』を提出してから48時間もしないうちに下されたもので、その証拠とは、マルコ・ルビオ国務長官の手紙に過ぎない。手紙の内容は、ハリル氏が罪を犯したわけではなく、ただ単にその言論ゆえに標的にされたのだと示すものだった」と批判した。 ルビオ長官とする政権関係者らは、ハリル氏を国外追放する政府の対応は、同氏の活動がたとえ「他の点では合法」だったとしても、「アメリカでユダヤ人学生を嫌がらせや暴力から守るため」でもあると主張している。 国土安全保障省のクリスティー・ノーム長官は11日、判事の判決を称賛。 「アメリカ合衆国で生活し、学ぶためのビザやグリーンカードを得るのは、特別な恩恵だ」として、「暴力を擁護し、アメリカ人の殺害を喜ぶテロリストを賛美・支援し、ユダヤ人に嫌がらせをするなら、その恩恵ははく奪されるべきで、あなたはこの国にいるべきではない。いなくなってせいせいする」とソーシャルメディアに書いた。 ハリル氏の弁護団は、同氏が反ユダヤ主義の行動をとったという証拠を、政府は提示していないと繰り返している。 マーク・ヴァン・デル・ハウト弁護士は、移民裁判所の決定を非難し、「アメリカで起きていることについて(ハリル氏が)発言する権利」のために、自分たち弁護団は戦うつもりだと述べた。 弁護団はまた、ハリル氏の扱いについて裁判が続くはずだと述べた。 弁護団の一人のジョニー・シノディ弁護士は11日、BBCに対して、公判後にハリル氏と長時間にわたり話をしたのだと明らかにして、ハリル氏は「自信を持っているし、支持されていると感じている」と述べた。 「マフムードはアメリカに敵対していない。反ユダヤでもない」、「何も間違ったことはしていない」と、弁護士は話した。 トランプ政権は、ハリル氏の発言内容を問題視するほか、グリーンカード(永住者カード)申請時に、必要な情報を一部開示しなかったとして、移民法違反だと主張している。 政権が問題視している中には、在ベイルートのイギリス大使館や国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)で働いていたという経歴が含まれるが、政府はこれについて新しい証拠を提示していない。 ホワイトハウスのテイラー・ロジャース報道官補佐は声明で、トランプ政権は「移民法の執行に尽力しており、アメリカにとって深刻な外交政策上の悪影響を及ぼす外国人を排除するために迅速な行動を取る」と述べた。 (英語記事 Judge allows Columbia graduate Mahmoud Khalil's deportation)

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