インチキ手術で医師免許剥奪→州知事選に立候補した「天才詐欺師」の得票数にビックリ!

ヤギの睾丸移植手術を行ったジョン・R・ブリンクリーは、1930年6月13日、「個人利益のために運営されている」との理由で、自身のラジオ局KFKBの放送免許を剥奪された。さらに同年9月17日、倫理意識の欠如した偽医者として医師免許を失う。彼はこの窮地を脱するため、9月20日に州知事選へ立候補した。※本稿は、ポープ・ブロック著、杉田七重訳『ヤギの睾丸を移植した男:アメリカで最も危険な詐欺師ブリンクリーの天才人生』(国書刊行会)の一部を抜粋・編集したものです。 ● 選挙戦のエンタメ化で 民衆の心を掴む ショーの幕開けはたいてい、KFKB局(編集部注:「Kansas First, Kansas Best」を掲げて1923年にブリンクリーが開設したラジオ局)の看板アーティスト、カウボーイの歌手ロイ・フォークナーが務めた。 大きな帽子とギターを手に舞台に現れて〈ストロベリー・ローン〉(編集部注:アメリカで最もよく知られているカウボーイソングの1つ)をはじめ、キャンプファイヤーやプレーリードッグにまつわる歌を歌う。その後にはフィドルのチャンピオンであるアンクル・ボブ・ラーキンの演奏、ゴスペルカルテットによる次期の知事に捧げる賛美歌の4部合唱、スティーブ・ラブ・オーケストラの演奏が続く。 その後にもヨーデル歌手の歌や、占い師の実演があって、ヨーデルと占いのあいだのどこかで、ミニー(編集部注:ブリンクリーの妻・ミネルヴァの愛称)とジョニー・ボーイ(編集部注:ブリンクリー夫妻のひとり息子)がステージに滑りこむ。 ナース帽を被った看護師たちが群衆のあいだを歩きながら、風船、巻き笛、棒付きキャンディなどを配り、そのあいだに、イエス・キリストの到来を予告するバプテスマのヨハネさながら、メソジスト派の牧師がドクター・ブリンクリーを華々しく紹介する。

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