弁護士の紀藤正樹さんが22日、X(旧ツイッター)を更新。静岡県警の本部長が、強盗殺人などの罪で死刑確定後に再審で無罪になった袴田巌さん(88)に謝罪したとの報道を受け、検察の姿勢をチクリと批判した。 静岡県警の津田隆好本部長は21日、浜松市内の袴田さん宅を訪問。袴田さんと、姉の秀子さん(91)に「逮捕から無罪確定まで58年間の長きにわたり、言葉では言い尽くせないほどのご心労、ご負担をおかけし、申し訳ありませんでした」と謝罪し、約2分間頭を下げた。 紀藤さんは、動画付きのネット記事を引用した上で、「謝罪の仕方を見るとよほど検察より警察の方がまともですね」とバッサリ。「検察の謝罪は言い訳たらたらで本質的に誠実な謝罪とは異なるものです」と断じた。 1966年に静岡県で一家4人が殺害された事件で、袴田さんは80年に死刑が確定した。静岡地裁による9月26日の再審公判では、捜査機関による3つの捏造(ねつぞう)があったとし、袴田さんの無罪を判決。静岡地検は今月9日、静岡地裁の再審無罪判決に対する上訴権を放棄し、無罪が確定した。 検察の判断を巡っては、畝本直美検事総長が無罪確定前日の8日に発表した談話の内容が、ネット上でも物議を醸した。 談話では、地裁判決の捏造認定について「強い不満を抱かざるを得ない」「判決には多くの問題があり到底承服できず、控訴して上級審の判断を仰ぐべき内容」と上で、控訴断念の理由を、「袴田さんは結果として長期間にわたり法的地位が不安定な状況に置かれてきた。控訴してその状況が継続することは相当でないと判断した」と説明。「刑事司法の一翼を担う検察として申し訳なく思う」という文言で謝罪した。 紀藤さんの投稿に、フォロワーからは「全くその通りです」「畝本直美検事総長は内向きのメンツ優先」「検察は『法的地位が不安定な状況に置かれてきた』ことを謝罪したが、不安定だったのは『命』そのもの」「検察主導の冤罪(えんざい)だったのか、との印象が強まる」などの声が寄せられた。