東京・歌舞伎町の支援団体の先駆け的な存在として活動してきた公益社団法人「日本駆け込み寺」が揺れている。元事務局長がコカインの所持容疑で現行犯逮捕(その後、起訴)され、信用を失っただけでなく、行政からの補助金も打ち切られたためだ。25日には内閣府から勧告を受け、再発防止策の策定などを求められた。支援を必要とする人たちへの影響は――。 「積み上げてきた歴史や信用が一瞬でゼロになってしまった」 日本駆け込み寺の清水葵・代表理事(26)は、落胆を隠さない。これまで元事務局長の田中芳秀被告(44)とともに運営を担ってきたが、薬物使用やトラブルの予兆はなかったという。 5月18日に現行犯逮捕された時、元事務局長は相談者の20代女性と一緒だった。捜査関係者によると、女性は「オーバードーズ(市販薬の過剰摂取)するぐらいならコカインや大麻のほうがいい」と、元事務局長に勧められたという。 駆け込み寺によると、元事務局長はフリーライターとして駆け込み寺を取材したことがきっかけで2021年ごろから職員に。報道対応など裏方の仕事が中心で、相談者への対応は主に清水さんが担っていた。 ■相談件数は5万件以上、キッズキッズの支援も 駆け込み寺に相談した女性(18)は、元事務局長が事務所を訪れた少女らに「ここにいれば大丈夫だよ」と話しかけるのが印象的だったいう。歌舞伎町の状況を知る人物として、朝日新聞を含めメディアにもたびたび登場していた。 駆け込み寺は02年に設立し、頼るあてのない人たちが全国から訪れる無料相談所だ。「誰もがSOSを言える社会」を目指し、虐待や薬物中毒などと向き合ってきたとされる。相談件数は設立以来5万件を超えるという。