英語圏のVTuberエージェンシー「VShojo」が解散を発表。先週のトピックスは、良くも悪くもこれに尽きる。 発端は7月22日。所属タレントの筆頭ともいえるIronmouseが、自身の収益から「VShojo」経由で行ったはずの免疫不全財団への寄付が、一年以上行われていなかったことを告発したのだ。 金額はおよそ50万ドル(日本円にして約7,400万円)。長時間配信を通して、同財団へ多額の寄付を行ったニュースは話題になった。彼女自身も分類不能型免疫不全症の当事者であり、恩のあった財団への恩返しをしようとしただけに、この事態は本人に大きな衝撃だったのだろう。本件について、すでに法的手続きが始まっていると告知された。 告発と同時に、Ironmouseは「VShojo」からの独立を告知。これを受けて、同じく所属タレントだったksonが日本支社である「VShojo Japan」のCEOを呼び出し、詰問。配信中には、自らも「VShojo」からの多額の報酬が滞っていることを告発し、7月末に予定していた脱退を早める形で、“同日限りでの脱退”を宣言した。 ここから、連鎖的に所属タレントが相次いで脱退を表明。最終的に7月25日、米国本社から「VShojo」の解散が発表された。しかし、発表内容が煮えきらないものだったためか、元所属タレントからの追加告発も相次いでいる。内容を見るに、今年に入って急に危うくなったのではなく、もともと爆弾を抱えていた組織だったことがうかがえる。 2020年に発足された「VShojo」は、タレントファーストを掲げ、高いネームバリューを持つVTuberを次々に抱えることで、英語圏VTuber業界に一大勢力を築き上げてきた。「ホロライブEnglish」や「NIJISANJI EN」に並ぶ、業界を牽引する勢力だったと言ってもいい。 今回の告発で、未寄付・未払いの資金は、運営資金に流用されていたことが明らかになっている。金額も考慮すれば、VTuber業界史でも最大規模のインシデントであり、逮捕者が出る刑事沙汰に発展しても不思議ではない。 このような形で有力勢力が解散に至ったのは、さすがに度し難い。月並みではあるが、離脱したタレントたちが報われる展開があることを願ってやまない。一応、本件に際して改めてIronmouseが呼びかけた免疫不全財団への寄付が、120万ドル(約1億7,780万円)に届いたのは幸いか。 ■恒例の『にじさんじ甲子園』は今年も熱戦を繰り広げる 極めてセンセーショナルな話題の一方で、にじさんじ恒例のゲーム大会企画『にじさんじ甲子園』は今年も開催された。 過去最大規模の大会かつ初のフル3D企画。開催前には参加者以外のタレントからも手の込んだ応援コンテンツが届き、真夏のイベントを大いに盛り上げた。 またシャープからは突如、「VR触覚コントローラー」が発表された。手のひらだけをおおうような手袋状のデバイスに、「Meta Quest」シリーズライクなスティックとボタンが親指の下に配置された、グローブ型デバイスだ。 本デバイスでは、指先の触覚素子が触覚を生み出す。触覚データの編集は「一般的な画像編集ソフト」を用いるとのことで、テキストだけではなかなかイメージしにくい機構だが、少なくとも『VRChat』などソーシャルVRでの運用が想定されていることはたしかだろう。実証実験段階で、暫定価格は10万円。すでにプロジェクトへの事前登録は終了している。 『VRChat』方面では、土日に『バーチャルマーケット2025 Summer』の追い込みと、リアルイベント『VketReal 2025 Summer』が開催。筆者も現地に足を運んでみたが、秋葉原ベルサールを2~3時間の待機列が囲む盛況ぶりには息を呑んだ。そして、ここ1年以内に始めた新しいユーザーも多そうだと、現場に並ぶ人々の話し声から感じていた。 また、横須賀市のメタバースプロジェクト「メタバースヨコスカ」は、『モンスターハンターワイルズ』とのコラボを発表した。ユーザー人気の高い3Dアイテムのスカジャンに、『モンスターハンターワイルズ』仕様の限定デザイン版が登場し、期間限定で入手できる。価格は大元のスカジャンと同様に無料だ。 筆者も軽く袖を通したが、ここまで有名なIPを採用した3D衣装を『VRChat』で着るのはなかなかに新鮮。リアルスカジャンも合わせて発売が告知されたが、ただニュースを眺めるよりも購買欲求が刺激される。「バーチャルで着て、リアルでも着る」流れは、やはり自然に形成できそうだな、と実感した一着だ。