報酬2300万円で日本人2人の殺害を依頼 元暴力団幹部が語るフィリピン闇社会「何百万か賄賂を積んで減刑」「日本で殺すよりはバレない」

フィリピンの首都マニラで8月15日夜、日本人2人が射殺された。ABEMA的ニュースショーでは、事件の背景を探るべく、フィリピンの闇社会に詳しい元暴力団幹部を直撃した。 15日午後10時40分ごろ、1台の白いタクシーを防犯カメラがとらえた。停車すると3人の人物が近づき、ドアを開け、後部座席から出てきたのは2人の日本人男性。すると次の瞬間、背後から銃を持った男が現れ、タクシーから降りた2人の男性を銃撃した。 タクシーや周辺にいた人たちはすぐに現場を離れるが、1人が日本人の荷物を物色。銃撃した男はバイクに乗り、荷物を物色した男を後ろに乗せて逃走。時間にして1分足らずの出来事だった。 死亡したのは静岡県出身の40代の男性と、福岡県出身の50代の男性。当初は強盗殺人事件と見られていたが、事件から3日後様相が変わる。被害者2人の旅行ガイドをしていたフィリピン人の兄とその弟が逮捕され、事件の背景を供述した。 マニラ警察は「強盗は捜査をかく乱するためで、本来の目的はターゲットを絞った殺害の可能性が高い」と18日に発表。マニラ警察の指揮官は「首謀者は日本にいる」と、日本人の首謀者から殺害を依頼された可能性が高いとした。 逮捕された旅行ガイドは、日本にいるとされる首謀者がマニラに来た際、ドライバーで雇われる関係だと供述。首謀者から約2300万円で殺害依頼を受け、前金として2万6000円を受け取り、犯行に及んだという。警察は被害者2人と首謀者の間に金銭トラブルがあったと見ている。 マニラに駐在する日本人向けのメディア「まにら新聞」の中村浩久編集長は「(900万ペソ、2300万円は)フィリピンで殺人を依頼する金額としてはべらぼうに高すぎて。フィリピン人がフィリピン人を殺害したみたいな事件で5万から10万ペソ(約12万円から25万円)ぐらいなので、額が離れすぎている」と疑問を呈する。 報酬の2300万円という金額は、フィリピンの平均年収のおよそ38倍。その金額を支払ってまで殺害を依頼したとするなら、背後に何があったのか。そして首謀者はトラブルがあった被害者2人に対し、どのようにしてガイドを近づかせたのか。元徳島県警捜査1課警部の秋山博康氏は「計画的犯行としては、かなりずさんだ」と指摘する。 今回、フィリピン人脈が広い元暴力団幹部に接触し見立てを聞いた。日本でヒットマンに依頼をした際の相場について尋ねると「3〜4000万かかる。処理までしてもらうとなれば」と答えて、「(首謀者は)長いこと金づるにされとったんじゃないか。恨みがなかったらこんなことにはならない」と続けた。約2300万円の依頼金については「そのくらいのお金をかけても殺したいと思われる人。邪魔に思ってる人がおったんだと思う。依頼した2000万円前後のお金を上回るようなお金が動いているか」とした。 元幹部は暴力団同士の抗争や縄張り争いとは違う金銭上のトラブルで、一方的に被害者を殺害することで解決させようとした可能性も考えられるという。「トラブルといっても嫌な態度を(表に)出せない。結局、最後は殺してしまうしかないところに行きついた」と推測した。 前金2万6000円の額については「(フィリピンは)大卒の初任給が5〜6万円の国だから、貧しく育つ人も多い。(頭金の)約2万円は結構遊べるイメージになるのだろう」と説明。 首謀者が被害者らのマニラ行きを把握し、ガイドを接触させた方法については「急の急に空港ついて『ガイドよろしく』にはならない。何かしらの利害関係はあったんで『先に遊んどって』というので行かせて、『自分が普段使っているガイドがプラカードで空港待ちしてるから、自分も後で行くわ』と。行く前に殺されてしまえば、首謀者もアリバイが立つ」と語った。 元幹部の見立てでは、首謀者と被害者2人は殺害にいたるほどの金銭トラブルを抱えており、表面上はそれをあらわにしない交際を続けており、マニラ行きを首謀者が提案した可能性も推測できるという。 しかし殺人は重罪。フィリピンでは死刑は廃止されているが、終身刑の可能性もある。逮捕、懲役のリスクをどうやって説得したのか。「お金を払えば(刑務所から)出てこられるんで『あとは任せとけ』みたいな。強盗殺人で片づけといて、何百万円か(賄賂を)積んで減刑してもらうとか、話が進んでたのではないか」と推察した。 元暴力団幹部によれば、フィリピンでは警察に賄賂を渡せば捜査を打ち切りにすることや出所させてもらえるケースがあるという。 フィリピンに連れて行って殺すというケースは裏社会では多いのか。「日本で殺すよりかはバレない。昔の事件で言えば、結婚している旦那の遺産目当てで、戸籍上のフィリピン人の嫁さんが『一緒にフィリピン帰ろう』と言って、旦那だけ襲われたりとか。奥さんは逮捕されていない」と明かした。 首謀者の人物像について尋ねると、元幹部は「素人ですよね」と答えて「カメラがある街中で銃撃を至近距離からして、証拠を残すようなもん。僕なんかがパッと思うのは奥さんがフィリピン人で『こんなのよくあるよ、何万円で人を殺すんだよ』『あ、じゃあ頼んじゃおう』と、軽いと思う。綿密に練られてない」と指摘した。 実行犯の別の1人は逃走中で、警察によると複数の人間が関わったとみて行方を追っている。 (『ABEMA的ニュースショー』より)

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