警察官をかたる「ニセ電話詐欺」が長崎県内で急増している。県警によると、県内で9月末までに発生したニセ電話詐欺の約97%を占める。特殊詐欺事件を所管する県警生活安全企画課の男性幹部の元にも犯人グループから電話があり「だまされたふり」をして対応。本紙の取材にその手口を明らかにした。 電話があったのは9月下旬。「+」から数字が続く見慣れない番号からの着信だった。相手は「○○信用協会」を名乗る男。「あなた名義のクレジットカードで高額な買い物の履歴がある。身に覚えはあるか」。あなたは被害者です、とでもいうかのような口調で、「心当たりがなければ警察に転送する。被害届を出すことができる」と続けた。 転送先の相手は「北海道警察本部の狭山」。こちらも男性だった。「被害届」の作成に必要な手続きとして住所や氏名など個人情報を尋ねてきて、LINE(ライン)のビデオ通話に誘導された。画面に映ったのは警察の制服を着た30代前後の男。「警察手帳」を示し本物の警察官であるかのように信用させた後、幹部にも身分証を提示するよう促したという。 犯行手口を探ろうと、それまで犯人たちの指示に従っていた幹部だったが、身分証について「信用できない」と拒否。すると、狭山を名乗る制服姿の男は「他にも被害者が待っている」などと言って、電話を切った。 幹部によると、通話時間は約1時間。制服や警察手帳は精巧で、画面に映り込んだ机やポスターも「警察署にありそうなそれっぽいもの」だった。「思わず相手のペースにのまれそうになった」と幹部。警察官が電話で被害届を受理したり、ビデオ通話で警察手帳や逮捕状を示したりすることはあり得ないが「電話で話せば、だまされる可能性が増す。+からの電話は詐欺。電話に出ないようにしてほしい」と力を込める。 9月末までに発生したニセ電話詐欺は63件。うち警察官や検察官を装った詐欺被害は61件で被害総額は約2億5千万円に上る。高齢者だけでなく現役世代の被害が多いのも特徴だ。県警は被害の未然防止のため、ホームページでニセ警察官とのやりとりなど犯人らの手口を公開している。