伊藤詩織による初の長編監督映画「Black Box Diaries」の日本公開版が完成し、12月12日からT・ジョイPRINCE品川での上映が決定した。世界60カ国以上で上映された本作は、当事者から指摘を受けた箇所など一部表現を修正し、「日本公開版」の新バージョンとしての公開となる。 本作は、ジャーナリストであり、映像作家の伊藤詩織が経験した衝撃的な事件を出発点に、沈黙を強いられてきた“ブラックボックス”を自らカメラを回しながら記録。事件の“その後”、社会の沈黙や偏見、そして、自身に圧し掛かってきた圧力と個人の体験から社会の構造に鋭く迫るドキュメンタリー映画だ。 製作には、「新聞記者」(2019)、「月」(2023)など社会派作品で知られるスターサンズが参加。2017年の記者会見以降、実に8年にわたる製作を経て完成した。イギリス・アメリカとの国際共同製作として制作され、2024年1月の第41回サンダンス映画祭ワールドシネマ・ドキュメンタリー部門大審査員賞 に正式出品。その後、世界各国の映画祭や賞レースで高い評価を獲得し、第97回アカデミー賞で日本人監督初の長編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされた。 2015年4月3日、ジャーナリストをめざす伊藤詩織25歳は、ある日突然、思いもよらない被害を受ける。それは、【同意のない性被害】だった。伊藤は実名を公表し、この事件と立ち向かうことを決意し、そこから伊藤の世界は一変する。性暴力の被害を受けた一人の女性が、自身に起きた事実を記録しながら、社会の壁を少しずつ打ち壊す――。声を上げ続ける痛みを通じて、この理不尽な世界と、そこで見せる希望の光を、圧倒的なリアルな映像で描き出す。 ▼伊藤詩織監督 コメント 本作は、私が被害直後から日本で直面した現実を追い、記録した作品です。逮捕は直前で止められ、証拠や証言は黒塗りでした。それでも集めた真実の「かけら」をつないだのが本作です。どうか私の名をいったん忘れ、身近な人の出来事として観てください。もし同じことがあなたや大切な人に起きたなら、何を信じ、どう動くのか。観終えたあとに交わされる小さな一言が、沈黙をほどき、次の誰かを守り、社会を少しずつ動かす力になると信じています。